SHIZUKA〜アーバン・レーサー〜

トップ > 2ch関係 > 三河屋 > part7-1


195 :SHIZUKA〜アーバン・レーサー〜:2006/03/18(土) 00:39:41 ID:dhgOPfTf
しずかはのび太に電話をかけていた。・・・のび太との約束を断るためだ。
・・・体調が悪いから遊べないの、ゴメンね・・・。全くの口実である。
勿論、体調は完璧である。能天気なのび太の返答にうんざりしつつも彼女は電話を切った。
けれども、空を見上げたら快晴だったから断るというのは、彼にあまりにも失礼だと考えた
彼女らしい口実であった。

彼女は今まで着ていた部屋着を脱ぎ、クシタニのレディース用ジャケットとパンツを身に纏った。
そして、XPD製のブーツを履き、ショウエイのジェットヘルとRSタイチのグローブを持って部屋を後にした。

オートバイを覆っていた銀色のシートカバーを取り、エンジンを始動させた。
ヘルメットを被る前に彼女はもう一度、空を見上げた。真っ青な空に子羊の様な小さな雲が一つ浮いていた。


-------------------------------------------------
196 :SHIZUKA〜アーバン・レーサー〜:2006/03/18(土) 00:56:57 ID:dhgOPfTf
彼女はオートバイを発進させた。

彼女の頼もしい相棒はヤマハのSR400だ。彼女はこの単気筒が奏でるミュージックに
惚れこんで購入したようなものだ。裏の住宅街ではピアニシモを奏で、
高速道路ではフォルテシモで張り上げ、急な登り坂では苦しそうに息をつきながらも
ファルセットを搾り出す。そして、単気筒ならではのスリム感。絶対的なパワーは劣るけど
楽しさだけならレーサーレプリカにも負けないと、彼女は思っている。

数分後、彼女は近くのインターチェンジから高速に上がった。彼女はヘルメットの中で
竹内まりやの真夜中のナイチンゲールを口ずさみながら徐々にスロットルの開度を増す。
周囲の景色の移り変わりを味わいながら、彼女とSRは加速する。


-------------------------------------------------
197 :SHIZUKA〜アーバン・レーサー〜:2006/03/18(土) 01:15:18 ID:dhgOPfTf
インターチェンジを下りると、そこは湖畔の街だった。
平日だというのにリゾート気分を満喫したい盛りの若い人たちで賑わっている。
だが、ここは目的地ではない。さらに西へと彼女とSRは向かう。
沿道の洒落たオープンカフェのデッキから貴婦人が、オートバイを何か汚いものを
見るかような目で見送った。彼女は貴婦人を睨みつけた。慌てて顔をそらす貴婦人。

風景が湖畔の観光地を抜け、田園地帯へと変化してゆく。
彼女は背筋を伸ばし、風を全身で受け止める。ヘルメットのシールドも開けて
都会とは違う空気を体内の細胞の一つ一つに送り込む。

SR400の単気筒の乾いた排気音を堪能しながら、やがてステージはワインディングへと
女の子の一人旅は続いてゆく・・・・・・


-------------------------------------------------
240 :SHIZUKA〜アーバン・レーサー〜:2006/03/20(月) 08:58:24 ID:UVmOGX2/
彼女とSRはワインディングへとルートをとった。深い木々の間から、さっき走っていた湖畔の街が見え隠れする。

そして、長い登りのストレートにさしかかった。SRは単気筒の力を最大限に発揮して、
しぶとくドッドッドッドッと地面を蹴る。それに合わせて、彼女も頑張れ頑張れとSRにエールをおくる。
乗り手とオートバイが一体化する瞬間だ。

だんだん道が狭くなり、それと同時にコーナーもきつくなる。
曲がりくねった道はコーナーをひとつこなすごとに、彼女を上へ上へと連れていく。
空はさらに青く澄んで、薄い雲はますます透明になってゆく。

-------------------------------------------------
241 :SHIZUKA〜アーバン・レーサー〜:2006/03/20(月) 09:02:08 ID:UVmOGX2/
やがて、山の頂上が近づいてきた。彼女はニーグリップを緩めた。肩と内股の緊張が解けていく。
彼女は誰ひとりいない山頂の駐車場にSRを停め、すぐ隣に広がる草原へと歩いた。
彼女は芝生の上で大の字になった。カッコウの鳴く声が響く。森林のエッセンスを存分に堪能する。

じっと空を見上げていると涙が出てきた。彼女は涙を放っておいた。
涙は頬を伝って落ち、地面に染み込んでいった。やがて彼女は手の甲で涙を拭いた。
そして、のび太には体調不良ということになっているのを思い出して、
なんて都合のいい話なのかしら、と彼女は声をあげて笑った。
そこに涙の跡形はなく、笑い声は凛と晴れわたった空に吸い込まれていった・・・・・。

〜Fin〜


トップ > 2ch関係 > 三河屋 > part7