首領蜂

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927 :首領蜂・SERIES 1:2007/06/26(火) 22:54:50 ID:UkgoJ7Yh
夕方。帰宅したカツオは愛機であるエイプ50を庭から表に引っ張り出した。
一発のキックでエンジンは目覚め、排気音が周囲の空気を震わせた。
カツオはフルフェイスに半袖Tシャツという、安全に気を配っているのか、
いないのか、ハッキリしない独自のスタイルでそれに跨がった。
「暖気OK…。よし行くか。」
エイプはゆっくりと前に進み始めた。


928 :首領蜂・SERIES 2:2007/06/26(火) 23:02:55 ID:UkgoJ7Yh
何故カツオのバイクはエイプなのだろうか?理由は多々ある。
カツオの原付免許では当然のことながら、選択肢は50ccに限られる。
そして、4スト且つリターン式ミッションを持つバイク。
アフターパーツの豊富さと、スタイルも選考材料だ。
これらを総合的に判断して、カツオは初めてのバイクにエイプを選んだ。
2ストはカツオの好みではない。臭いと急激な加速が苦手なようだ。


930 :首領蜂・SERIES 3:2007/06/26(火) 23:14:34 ID:UkgoJ7Yh
カツオのエイプは中古車だ。
購入した時には前のオーナーの手によって、結構イジられている状態だった。
スピードメーターは100km/hスケールのものに交換され、
脇には後付けのタコが装着されていた。
マフラーもモリワキが奢られ、カツオは喜んで飛びついた。
支払い総額は20万、バイトで貯めた金を一括ではたいた。

今、カツオの胸は将来への期待でいっぱいだ。
普通二輪を取得し、ボアアップ…。バイトのやり甲斐を益々感じていた。


932 :首領蜂・SERIES 4:2007/06/26(火) 23:28:26 ID:UkgoJ7Yh
車の流れに合わせ、40km/h台後半で巡航する。
カツオが30km/h制限を守るのは警察の前だけだ。
しかし、無視されがちな二段階右折についてはいつでもきちんとやる。
カツオの変わったこだわりのひとつだ。
バイパスで行った最高速テストでは80km/hをマークした。
購入後に自らで交換した最高速向けスプロケが効いているのだろう。
カツオは練習場へ続く脇道にに入った。



935 :首領蜂・SERIES 5:2007/06/26(火) 23:38:02 ID:UkgoJ7Yh
練習場といっても、隔離された通行量の少ない公道に過ぎない。正体は工業団地だ。
「関係車両以外通行禁止」の看板をスルーし、カツオはエイプを全開にした。
広い道幅、長い直線を直角のカーブで繋ぐここは、カツオのテストコースと化していた。
天敵の大型トラックが通らない時間帯を狙って、カツオはよくここに練習にくる。
エイプを乗りこなす為の努力なら厭わない…。
カツオには確固たる強い信念が存在していた。



937 :首領蜂・SERIES 6:2007/06/26(火) 23:49:05 ID:UkgoJ7Yh
ブロックパターンの純正タイヤは、残り溝がかなり減っていた。
この日はギアチェンジ習得の為、ライテク本片手に汗を流した。
ブレーキにも一抹の不安を感じた。手付かずの純正状態だ。
減速の重要さを感じたカツオはボアアップよりも先に、
ブレーキを改造することにした。
練習を終えたカツオは工業団地を出て、産業道路に合流した。
辺りは暗くなりはじめついた。 暫く快調に流していたカツオ。
だが、背後から凄い勢いで追い上げてくる一台に息を飲んだ。



939 :首領蜂・SERIES 7:2007/06/26(火) 23:57:48 ID:UkgoJ7Yh
「はっ…速ぇ!なんだありゃ!」
威圧感をミラー越しに感じたカツオは振り返った。
F1マシンの如く甲高いエキゾーストノートが近づいてくる。
「バリ…オス……?」
カツオが口をついたが瞬間、青色の駿馬は白い類人猿の前に出た。
そして、思春期の青年は胸の膨らみとヘルメットから出た後髪を確認した。
「お…女?」


943 :首領蜂・SERIES 8:2007/06/27(水) 00:08:54 ID:iXpTSlUJ
虚を突かれた、とはこういうことを言うのだろうか。カツオは酷く狼狽していた。
今まで女の子の乗る原付スクーターや仕事人のカブ・スリーターを
カモって遊んでいた自分が急に恥ずかしく思えてきた。何バカやってんだ俺は…。
家に帰ると、無意識のうちに教習所の申込書に手がのびていた。

973 :首領蜂・SERIES 9:2007/06/27(水) 18:18:55 ID:iXpTSlUJ
割愛するが、その後カツオは難無く教習をこなし、合格。
無事に普自二免許を取得した。同時にエイプも大幅に手を入れられた。
当初計画していた50改88cc化は中止。
解体屋から拾ってきた100エンジンにスワップ後、125ccにボアアップ。
CDI、パワーフィル、ビッグキャブ、強化ミッション・クラッチと
王道をやり尽くし、ディスクブレーキも入れた。

カスタム地獄に嵌まっていたカツオは、エイプもう一台分チューニング代をかけた。
バイトの時間も増えたが、苦にならなかった。
全てはあのバリオスを撃墜する為に…。
彼女と出会ってから3ヶ月が経とうとしていた。


974 :首領蜂・SERIES 10:2007/06/27(水) 19:03:58 ID:iXpTSlUJ
戦闘力を増したエイプは原二のピンクナンバーとなり、
カツオの練習ステージも工業団地からワインディングに変わった。
そして今日、カツオは再戦を申し込む為に産業道路に待ち伏せした。
「あのバリオスは5時40分に此処を通過する…。」
路肩からうかがっていたカツオは、遠くから聞こえてくる
バリオスの音を聴き分け、ゆっくりと走り始めた。
――――!
風を切る音とともにバリオスがエイプの前に飛び出た。
カツオはフルスロットルでそれを追いかける。


975 :首領蜂・SERIES 11:2007/06/27(水) 19:07:30 ID:iXpTSlUJ
「凄ぇ…。追いついてる…!行ける!」
カツオは一方的に挑み、そして一方的に突き放された前回との違いに喜び、テンションが上がった。
バリオスは減速し、道路脇のコンビニの駐車場に入った。エイプもそれに続いた。
カツオは満面の笑みを浮かべながら、バリオスを操るライダーの所へ近づいた。
これが二人の運命を大きく左右してしまうことも知らずに…。