Part2-8 甚六物語1
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170 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/25(火) 15:28:14 ID:NLp1pBel
ブォンブォンブォン…
遠くからバイクの空ぶかしの音が近づいてきて、それが『音』から『轟音』に変わる。
「うるさい…」
自室で勉強していた甚六は呟いた。
ノートを閉じると付けっ放しにしていたパソコンを操作し、某巨大掲示板サイトの目的のスレッドに書き込みをする。
『珍UZEEEEE−!』
『どうしたいきなり?』
すぐ付いたレスに、甚六はさらにレスを付けた。
『家の前を珍があおりながらちんたら走ってんだよ。こちとら勉強中だっての!』
『マジで?!俺の所も今家の前を通過してったよ!』
『俺の所は今接近中。つーか皆近所か?その珍どんな格好してた?』
甚六は記憶を辿りながら、新たにレスを付けた人の質問に答えた。
『ん〜…今日は姿見なかったけど、いつも金曜のこの時間ここ通るのは《満珍狼》って珍服着た二人組だよ』
『マンチンロウ!キタコレ!』
『ちょwwwwwwwwww今それ通過してったwwwwwwwwwww』
そのまま三人で盛り上がっていると、さらに違う人が書き込みをした。
『がたがたウザいよ。珍の一匹や二匹潰しちまえよ。』
「…え?」
甚六は狼狽して、すぐに返事が出来なかった。
今まで一度も喧嘩をした事も、殴ったり殴られたりもした事の無い甚六に、珍潰しなんて出来るはずもなかった。
『いいなソレ。三人がかりで潰しやるか?』
『よし、いつやる?来週この時間に待ち伏せするか?』
甚六を無視して、二人が勝手に話を進めている。
今更やらないと言える空気ではない。
『じゃあどこで待ち伏せする?』
つい甚六も書き込みをしてしまった。
同時にその様子を見ていた第三者の書き込みが表示された。
『祭のヨカーーーン!!』
172 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/25(火) 16:58:29 ID:NLp1pBel
一週間後。
甚六は二車線の車道に沿って生えている街路樹の影で、片膝を着き、ロープを握って息を殺していた。
甚六は携帯を開き、サイトの書き込みをチェックする。
作戦はこうだ。
いつもの二人乗りの珍が一台でこの道を通る。
タイミングを見計り、甚六がロープを引いて道を塞ぎ、
珍が停まった所で隠れていた甚六を含めた三人が棒で袋叩きにして、隠していたバイクで散り散りに逃げる。
甚六が携帯に目をやると、さまざまな書き込みが目に飛び込んでくる。
その中の一つの書き込みに目が行く。
『ギャラリーに来て今歩道橋の上にいるけど、オマイラどこにいるの?』
近くの歩道橋の上を見ると、確かに人が居る。
『確認した。今から合図送るわ。』
甚六はそう書き込むと、ロープから手を離し、背後に停めてあった甚六のバイク、88年式スズキ GSX−R1100に近寄った。
甚六は日々閉塞感を感じていた。
その時友人宅で半ば無理矢理見せられた映画(タイトルは憶えていない)で、漫画を読みながら見てたから内容は憶えてないが、
主人公達がハーレー(?)でアメリカ大陸を横断していたと思う。
その姿がすごく自由に感じ、自分もハーレーに乗れば自由になれると思い、甚六は小遣い、お年玉貯金で教習所に通い、この春無事大型自動二輪免許を取得。
早速ハーレーを買いに行ったが想像以上に高く、浪人生である自分に親がローンの保証人になってくれる訳もなく諦めたが、
オークションで『イオンなく絶好調』と書かれたこのGSX−Rを車検二年付25万で、親から借金してハーレーまでの繋ぎとして買ったのだ。
梅雨時特有のジメジメした蒸し暑い芝生から出ると、甚六はハーレーを買う為の道路工事のバイトで日焼けした手でGSX−Rにキーを差し込み、メインスイッチを捻った。
テールランプとヘッドライトが闇に浮かび、すぐに消えた。
『おぉ〜、そこか〜』
直ぐ様書き込まれたのを確認すると、甚六はヤブ蚊を手で払いつつ、いそいそと配置に戻った。
174 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/25(火) 17:10:04 ID:NLp1pBel
ブォンボボブォンボボ…
来た!!
甚六は生唾を飲み込んだ。
掌に汗が滲む。
空ぶかしをしつつ接近してきた珍車を目視で確認し、また街路樹の影に隠れると、
音を頼りにタイミングを見計らい、甚六は一気にロープを引っ張り街路樹に縛り付け、足元に置いていた棒を掴んで道に飛び出した。
しまった!早すぎた!
音の割には予想以上にゆっくり走っていた珍車は、多少よたつきながらも余裕をもって停車した。
珍二人と目が合う甚六。
「何だテメェはゴルァー!!」
甚六より二つ三つ年下であろうニキビ面の少年が、顔を奇妙に捻じ曲げながら吠えた。
181 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/25(火) 20:36:22 ID:NLp1pBel
「やっちまうぞテメェコノヤロー!」
タンデムシートに座っていた太った少年が、運転していた少年に続き威嚇の声を上げた。
「ヒィッ!いや、あの…」
甚六は狼狽え、しどろもどろになる。
皆早く出てきてよ!何で僕一人なんだよ!
甚六は皆がやると言うから来ただけだった。
他の人が暴れるのを少し手伝ってお茶を濁し、あわよくばサイトで神になれれば…と考えていただけだった。
「おぅコラやっちゃーぞコラ!オォ?!」
何時の間にか甚六はニキビ面の少年に胸ぐらを捻り上げられていた。
「違…そんなつもりじゃ…」
「うるせーんだよゴルァー!!」
バチン!
甚六が言い訳をする前に、大きく振りかぶったニキビ面の少年の拳が、甚六の左頬を軽い音と共に捉えていた。
「ヒィッ?!」
甚六は2、3歩よろめくと、熱くなった頬を押さえた。
殴られた?!僕今殴られた?!
甚六の頭はさらに混乱する。
何故僕は殴られた?
何故僕はここにいる?
何故皆来ない?
何故誰も助けてくれない?
何故?何故?何故?
「ヒャハハ!ヒィッ?!だって!ケンちゃんの拳食らったら三日は飯食えねぇぞ?!」
太った少年がさも楽しそうに笑う。
「オラ!殺してやんよぅ?!」
ニキビ面の少年−ケンちゃん−が再び甚六の胸ぐらを掴み、拳を振り上げた。
甚六の顔が混乱と恐怖で歪む。
ケンちゃんの拳が振り下ろされた。
182 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/25(火) 20:43:01 ID:NLp1pBel
「ヒイッ?!」
甚六は息を呑み、目を強く閉じた。
…あれ?痛くない?
「ケンちゃん?!ケンちゃーん!!」
甚六は恐る恐る目を開けた。
甚六は我が目を疑った。
珍車にもたれる様に倒れているケンちゃん。
そのケンちゃんに必死になって声をかけるピザ男(仮名)。
そして、まっすぐに伸ばされた自らの両腕。
どうやら僕が彼を突き飛ばして失神させたらしい…
甚六はようやく状況を理解した。
けど何で僕にそんな力が?
「テメェコラマジ殺すっ!」
ピザ男が両腕で甚六の胸ぐらを絞り上げた。
甚六は目を白黒させながらピザ男の腕を掴んで、少しでも肺に酸素を取り込もうとした。が…
「痛ででででででで!!」
ピザ男が悲鳴を上げる。
甚六は気付いていなかったが、先天的に脂肪が付きにくく、筋肉が付きやすい甚六の体を、ハーレーが欲しい一心で始めた土木のバイトが鍛え上げ、
さらに融通が効かない程の真面目な性格の所為で人の何倍も働いたお陰で、理想的なパワー、スピード、スタミナを手に入れていたのだ。
勿論ピザ男が逞しいのは見た目だけで脂肪の固まりだった事もあったが。
183 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/25(火) 20:49:01 ID:NLp1pBel
驚いていた甚六が我に帰ると、ケンちゃんが携帯で仲間に連絡をとっているのが目に入った。
甚六は慌ててピザ男の腕を振り払うと、その場で向きを変え逃げ出した。
芝生を駆け抜けGSX−Rに飛び乗り、大急ぎでヘルメットを被り走りだした。
珍二人の怒声を振り切るように加速する。
すると側道から幾台もの珍車が飛び出してきた。
半ばパニックブレーキの様にブレーキをかけ、素早く右折する甚六。
運良く衝突、転倒を免れたGSX−Rは、その白と青に彩られた肢体を荒々しく加速させた。
甚六を追い詰めようと、珍達があちこちから湧いて出てきたが、幸いな事に運が味方し、未だ捕まらずに走り続けている。
その時、甚六の目に緑の光が飛び込んできた。
185 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/25(火) 20:58:04 ID:NLp1pBel
首都高の入り口だ。
甚六は閃いた。
ここに入れば珍達は料金所で止められるだろう。
GSX−Rを入り口に突っ込み、急いでチケットを受け取る。
背後に珍の爆音が迫る。
慌てて走りだした甚六だが、ミラーには入り口を突破した珍が映っていた。
甚六は上身を伏せ、アクセルを全開にした。
甚六がオーナーになり初めて全開にされたGSX−Rは、その隠された牙を剥いた。
凶悪なまでの加速Gが主人である甚六の脳を襲い、血流が妨げられ、ほんの一瞬甚六の視界が暗くなった。
目を見開き、体が硬直する甚六。
呼吸を忘れ、瞬きも忘れ、ブレーキもアクセルを戻す事も出来ず、ただ凄まじい勢いで流れ、溶けていく風景に甚六は恐怖していた。
今の彼にとって、先程までの珍に絡まれたり追い回されたりしていたのは、麗らかな春の木漏れ日の様な物だった。
死ぬ。
甚六の思考は死のイメージで全て覆われていた。
201 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/26(水) 11:15:22 ID:dv5uCITg
甚六の遥か先にコーナーが見えた。
まさに迫るという勢いで近づいてくる。
甚六はパニックに陥った。
死ぬ覚悟なんてあるはずない。
大体僕が何故こんな目にあわなきゃならないんだ。
僕はなんて運が無いんだ。
何故皆来てくれなかった。
平凡な人生を歩み、波風立てず、平凡に死んでいく筈だったのに…
受験を失敗したのが躓きの始めだったのかなぁ…
意味の無い思考が甚六の脳内を巡る。
刹那。
ズボォッ!!!
黒い何かが甚六を抜き、目の前が赤く光る。
ブレーキランプ!!
甚六の思考、感覚が甚六の支配下に戻り、甚六は出来うる限りの限界ブレーキングを敢行した。
202 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/26(水) 11:16:30 ID:dv5uCITg
ダメか?!
だが思ったより速度が出ていなかったらしく、甚六程度のテクニックによるブレーキングでも、
何とかコーナーを曲がりきれる位の速度まで落とせた。
おっかなびっくりコーナーを曲がる甚六。
先程の黒い物体−バイク−がゆっくり目と鼻の先を流している。
甚六は軽くアクセルを開けると、黒いバイクと並走し、ちらりと横目で見た。
Z…X…11?
真っ黒なヘルメット、真っ黒なツナギを着たそのライダーが乗るそのバイクのカウルには、そう書かれていた。
そのライダーは甚六をじっと見つめていた。
スモークシールドの所為で、その表情は甚六からは伺えない。
その時、そのライダーが呟いた。
「甚六さん、アンタはこちら側の世界にくるべきじゃない。さっさと帰るんだな。」
203 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/26(水) 11:17:39 ID:dv5uCITg
「…え?」
この風切り音、排気音の中、聞こえるとは思えない声が聞こえた。
いや、まず何故彼(?)が僕の名前を知っている?
質問しようと甚六がシールドを上げた瞬間、そのライダーはタイヤを鳴かせながらフル加速で甚六を一瞬で振り切り、
テールランプの残光だけを残し、遥か先のコーナーへ消えていった…
先程までの恐怖が拭い切れず、甚六は法定速度以下で走り続け、たまたま目についたパーキングエリアに入った。
そのパーキングエリアには売店など無く、小綺麗なトイレと自販機があるだけだった。
甚六は自販機でオレンジジュースを買うと縁石に座り込んだ。
ふと、先程の恐怖が蘇り、手が震えてプルタプが上手く開けられない。
「…今日は色々あったなぁ…」
何とか缶を開け、乾いた喉をオレンジジュース一気飲みで潤すと、甚六はため息混じりに呟いた…
210 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/26(水) 17:22:57 ID:dv5uCITg
突然辺りに女性声優がロリ声で歌う、魔法少女アニメの主題歌が響く。
妹のうきえからのメールだ。
携帯を開き、メールボタンを押す。
《お兄ちゃんこんな時間までどうしたの?みんな心配してるよ?》
甚六はすぐ帰ると返信し、腕時計をちらりと見た。
AM2:15
「いたぞー!」
熱ダレで言う事を聞かない珍車を必死にあおりながら、数人の珍がパーキングに入ってきて甚六を取り囲んだ。
顔を歪め口々に何かを叫ぶ。
甚六は思わず鼻で笑った。
僕はこの程度の奴らを恐れていたのか。
「何が可笑しいんだゴルァー!!満珍狼ナメてっと殺すぞ?!」
風圧で目を真っ赤にし、崩れた髪型を振り乱し少年が吠える。
これが笑わずにいられるか。
先程味わった死の恐怖を乗り越えた甚六は、自分に足りなかった物−メンタルの強さ−を手に入れていた。
男は一晩会わないだけで化ける。
既に珍が何人集まろうとも甚六にはさしたる問題ではなかった。
227 名前:甚六物語[sage] 投稿日:2006/07/27(木) 01:13:12 ID:XDlCmtV7
甚六はゆっくり立ち上がった。
珍達が一歩後ずさる。
僕はこいつらより強い。
僕はこいつらより速い。
先程までのチェイス、喧嘩などで、甚六の胸には黒い炎が燻っていた。
いや、今まで暴力やスピードの世界に無縁で生きてきて、今日自分の立場が珍よりかなり上なのを知って、自分に酔っていると言った方が正しいか。
酔っている甚六には分からなかった。
確かに甚六は強い。
だが、珍達の方が、人数も場数も多いのだ。
珍達はそれを理解していたが、甚六の根拠の無い自信に気押されていた。
「…っ!ブッ殺せー!」
リーダー格の少年が叫ぶと、珍達は一斉に甚六に迫った。
232 :甚六物語 :2006/07/27(木) 15:10:20 ID:XDlCmtV7
その甚六と珍達の間に、派手なスキール音を立て、一台のバイクがドリフト状態で割って入った。
甚六と珍達は慌てて飛び退く。
「…小僧共止めな。」
重低音のアイドリングを響かせる、荷物満載のV−MAXから降りたその男は、
男は赤いジェットヘルメットを脱ぐと、口元に貯えた髭を撫でながら皆を見渡し静かに言った。
「んだジジィ?!邪魔すると殺すぞ?!」
いきり立った珍の一人が、その男の胸ぐらを掴み上げた。…はずだった。
「…え?」
少年は夜空を仰いでいた。
少年は何時の間にか男に腕を取られ、一瞬の内に倒されていた。
「やりやがったなコノヤロー!!!」
珍達が甚六を無視し、男を取り囲んだ。
241 :甚六物語 :2006/07/28(金) 21:06:51 ID:yXgCNoTL
幾台もの バイク、車の排気がパーキングに近づいてくる。
その音を聞いて、リーダー格の少年が高笑いした。
「ヒャハハハ!オラウチの奴らが来たぞ!俺等はチームに命賭けてんだよぅ!
そのチームコケにしたんだ。今更逃げれねぇぞ!覚悟しろや!」
そこへ珍達のバイクや車が列をなして入ってきた。
「オメー等コイツ等殺せや!」
だが後から来た珍達は動こうとしない。
「何やってんだオメー等?!早くしろや!」
「…無理ッスよ…勝ち目無いッスよ…」
「はぁ?!」
後から来た珍の一人の台詞を聞き、我が耳を疑ったリーダー格の少年だったが、5分後には全てを理解した。
245 :甚六物語 :2006/07/28(金) 21:11:59 ID:yXgCNoTL
「あ…あ…」
リーダー格の少年は言葉を失った。
たった5分でパーキングは数十台の走り屋のバイク、車で埋め尽くされていた。
本能の赴くまま、自分勝手に生きてきたリーダー格の少年は、その本能で悟った。
こいつらは普段街で見る車、バイク乗りとは違う。
こいつら敵に回したらシャレんなんねぇ…
その中の一人、青いR34GT−Rに乗る青年が、V−MAXの男に声をかけた。
「浜さん、お久しぶりです。何時東京に?」
「おぉ小羽田君か。いや、今さっきね。」
「連絡くれれば飲み会のセッティングしたのに…」
「いやいや、それには及ばんよ。大体気分でどこに行くか決めるから、約束した日に帰ってこれるか…」
浜と小羽田は楽しそうに笑った。
周りの走り屋達も浜に挨拶に来たり、お互いで雑談を始めたりした。
ぽかんと口を開けた甚六と珍達を放置して。
「あぁ、自己紹介がまだだったね。浜と申します。よろしく。」
いきなり浜に話し掛けられた甚六は心臓が飛び出しそうになる位驚き、慌てて頭を下げた。
「あの、その、伊佐坂甚六と言います。その、さっきはありがとうございました!」
浜は首を傾げた。
250 :甚六物語 :2006/07/29(土) 10:54:37 ID:EkCooyEs
「伊佐阪?まさか君は…」
ヴァオゥ!!!
皆の会話を巨大な排気音が遮る。
「あっ!」
甚六はつい声を出した。
さっきの黒いライダーだ!
パーキング入り口を塞ぐ様にたたずむ黒いライダーは、何故か浜を真っすぐ見つめていた。
まるで甚六の存在など忘れたかの様に。
「待てやゴルァ!!」
この場を離れるタイミングを見計らっていた珍達は、これ幸いとばかりに先程自分達をあっさり抜き去った黒いライダーに殺到した。
そんな珍達を嘲笑うかの様に、黒いライダーはフロントタイヤを高々と上げて立ち去った。
それを追う珍。
そして甚六もそれに続いた。
何故か彼を追いたかった。
追わねばならない気がした。
ひとしきり爆音の去ったパーキングで、浜は一人呟いた。
「SABU…お前はまだ…」
252 :甚六物語 :2006/07/29(土) 12:42:27 ID:EkCooyEs
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」
息が上がる。集中が途切れそうになる。
甚六は苛立ちながら、目の前を走る珍達の背中を睨み付けた。
珍達は必死になって目の前のコーナーをクリアしていくが、
道幅一杯に珍車が広がっている事、制限速度に毛が生えた程度の速度で走っている事で、甚六の後ろに大渋滞が出来ていた。
「くそっ…」
黒いライダーの姿はもう無い。
体の中が燃える様な苛立ちで、甚六は夜空に吠えた。
「くそォーーーーーーー!」