タラオ物語3
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748 :タラオ:2007/01/15(月) 22:12:16 ID:vspoGSzm
中型の段階が修了し、CB750での教習となった。
鉄塊。取り回し。重い。「フォア」とは比べ物にならない。
駐車場からCBを引き出して、所定の位置にスタンバイ。教官の号令を待つ。
「は〜い、じゃあ大型の人〜こっちにきてくださ〜い」
あれ?女性の教官もいるんだ?めずらしいな。
20代後半くらいか?栗色のショートヘアー、小さな頭に、小さなジェットヘルメット。
少したれ気味の瞳に、意志の強さをにおわせる口元。
外でのこういう仕事なのに、メイクは結構ちゃんとしている。正直、可愛い。
「はいじゃあ、今日は3人ですね。えっと松岡さんと、斉藤さんと、
えっ!?フグタさん!?」
「はい?」
あぁ、まだ初日の暴走事件が糸を引いているのか。。。
一瞬そう思ったが、彼女は俺の顔を見て、蒼白になっていた。
「あの、なにかおれ、しました?」
「あっごめんなさい。なんでもないの。え〜とじゃあ松岡さん、今日は・・・」
怪訝そうな顔の俺を受け流し、教習の説明に入る彼女。
気になったが、理由をたずねることは、なぜか憚られた。
749 :タラオ:2007/01/15(月) 22:50:21 ID:vspoGSzm
俺の教習はその後も順調に進み、ようやく卒業検定と相成った。
あの女性教官には、(ネームプレートによると港川鮎美さんというらしい)それからも何度か担当されたが、
僕の顔にどうしてあんな反応をしたのか、その理由を聞くのはなぜか出来なかった。
「はい、じゃあお疲れ様でした〜!合格発表まで、しばらくありますので、放送で呼び出すまで、自由にしてお待ちください」
さて、時間つぶすか…
喫煙コーナーのプラスティックチェアに深く腰をかけ、深く煙を吸い込みながら先ほどの検定を反芻する。
ミスらしいミスは無いはずだ。
ふと眼を上げると、数台はなれた自販機から彼女がペットボトルを取り出そうとしていた。
午後の紅茶。
今しかない、タバコの火を消し、ヘルメットを片手に立ち上がっていた。
750 :タラオ:2007/01/15(月) 22:51:35 ID:vspoGSzm
「港川さん?」
初めて名前で呼ぶ。
振り向き、顔をこわばらせる彼女。なにが彼女をそうさせるのかわからないが、嫌われてはいないと思った。
「あの・・・フグタです。どうして俺を見るたびに、そんな風にするんですか?
俺、あなたの気に障るようなことしました?
もしそうだったら、すいません。でも…理由を教えてもらえませんか?」
「ああ、ううん、フグタさん…ごめんなさい、そうじゃないの・・・」
曖昧に眼をそらす彼女。
751 :774RR:2007/01/15(月) 22:52:15 ID:vspoGSzm
「ならいいんですけど、じゃあ、どうして?」
答えない。落ち着きなくヘルメットのストラップをいじるだけ。
「ああ、ごめん。困らせるつもりは無いんです。ただ、少し気になったものだから」
「そうですね、私こそごめんなさい。ちょっとおかしかったよね・・・
うん、わかった。フグタさん、この後、用事ある?」
「いや、時間なら売るほどありますけど…」
「じゃあ、少し付き合ってもらっていい?」
決然と、俺の眼を見て言う。可愛い顔に浮かべているのは口元だけの微笑。
「OKね?じゃあ7時に駅で待ち合わせ」
期待の中の不安? 不安の中の期待?
どちらでもいい。ただ確かに、あの時何かが動き始めていた。
756 :タラオ:2007/01/16(火) 00:15:51 ID:Y/BgmghS
6時50分に俺の乗った電車は小田急線は梅ヶ丘のホームに滑り込んだ。
南口の改札。彼女は,もうそこに立っていた。
タイトなブラックジーンズにチャコールグレーのニット、アッシュホワイトのジャケット。
決して飾り立ててはいないが、長身の彼女には、そんなモノトーンの装いがよく似合っていた。
「すいません、待たしちゃいました?」
「ううん、そんなこと無いよ?じゃあ行こう、ああ、改札から出ないで、私もそっちに行くから」
何処に向かうつもりなのか?下北沢で井の頭線に乗り換え、神泉の駅で下車。山手通りを中目黒方向に向かう。
757 :タラオ:2007/01/16(火) 00:17:27 ID:Y/BgmghS
どうやら行きつけの店があるようだ。電車内でも、タクシーの社内でも、特に会話は無い。
互いに牽制しあっているというか、話題を探しているというか、話のタイミングが見つからないのだ。
「あ、ここでいいです」
彼女がタクシーを止める。
若干の渋滞をぬけ、どうやら目的地に到着したようだ。彼女はとあるビルの地下に続く階段を降りていった。
ショットバー。洗練されているが、客にプレッシャーを与えるほどではない。
俺にはあまりなじみの無い場所だが、つまりはセンスが良いのだろう。
773 :タラオ:2007/01/16(火) 01:43:00 ID:Y/BgmghS
奥のテーブル席。互いにジャケットを着たまま、スツールに腰を下ろす。
「飲めるんでしょ?タラオ君」
頷く。「タラオ君」ときたか。
「いらっしゃいませ、なんにいたしましょう?」
「わたしはダイキリを」
「ジンライム」
注文。即決する。数分後、グラスがテープルに運ばれてきた。まだ、会話は無い。
「いい店ですね、」
口火を切るための当たり障りの無い言葉。
「やっぱりそう思う?以前、よくつれてきてもらったの。」
「誰に?」
「・・・」
理解した。すべてを聞く必要はない。もうわかっていた。否、最初から知っていた。
この人は、親父の・・・親父の女だ。
774 :タラオ:2007/01/16(火) 01:44:35 ID:Y/BgmghS
「軽蔑する?」
彼女が聞いた。諦観を混じえた瞳。寂しい瞳。小さく笑う。
「軽蔑していいよ…だってかっこ悪いよね。妻子ある人を好きになって、棄てられて、
でもどうしても忘れられなくて、内心では彼の代わりに彼の息子さんを誘惑しようとまでしてた。最低だよね…。」
「マスオさんは、やさしい人。本当にやさしい人だよ。
自分がのことを良くわかっていて、強い人だから人にやさしくなれる・・・大きい人。
だから、好きになっちゃった。どうしようもなかった。だから彼のせいじゃない。悪いのはわたし。
たから、お願いだから、あなたのお父さんを悪く思わないで…」
堰を切ってあふれ出す言葉。
775 :タラオ:2007/01/16(火) 01:46:11 ID:Y/BgmghS
「でも、なにも言わずに棄てるのはずるい。そんなのは納得行かないの。
だから…どうしてなのか心当たりがあったら教えて欲しい・・・」
テーブルの端で、握り締められた彼女の手が小さく震えていた。小さな手。思わず左手で包み込んだ。
「軽蔑なんてしないよ。あなたは素敵な人だと思う。あなたのせいじゃない。
親父が惹かれたのも良くわかる。
・・・親父は・・・フグタ マスオは一月前に死にました。」
冷静に告げた。
俺の左手の下、彼女の手が壊れてしまうほど、いっそう強く握り締められ、そして震えながら緩んだ。
「そう…」
真直ぐに俺の眼を見て、破顔した。瞳から雫がこぼれる。いく筋も。
ああ…いい女だ、と思った。女性関係にあまり熟達しているとは言いがたい俺だが、素直にそう思った。
テーブルに一万円札を置き、店を出た。
左手には彼女の震える手を握り締めたまま。
789 :タラオ〜Acceleration Of The Blood〜:2007/01/16(火) 23:13:02 ID:Y/BgmghS
街を照らす街頭の明かり、雑多に行き交う人々の喧騒、携帯で繋がる若者たちの群れ。
その間を縫うように、彼女の手をとって足早に歩いた。
「待って、タラオ君」
待たない。
「待って・・・」
・・・待てない。
「待ってったらっ!!」
足を止めた。叫び声に、周囲の人がいぶかしげに振り向く。
「こんなのはいやっ!勝手すぎるよ!かわいそうだから私を抱くの!?
哀れだから私を抱きたいんでしょ!?彼の息子に、そんな風に思われたくない!
・・・それなら蔑まれていた方が全然ましだよ・・・」
叫び声は徐々に小さくなり、最後は独白するような呟きとなって消失した。
彼女のいう通りかもしれない。彼女はかわいそうな人で、確かに俺は彼女を哀れんでいた。
だけど
「ああ、確かに<僕>の勝手すぎた。あなたの言うとおりだ・・・でも、それだけじゃないよ。
上手く言えないけれど、あなたの助けになりたい。<僕>を助けて欲しい。
あんな顔で笑っちゃ駄目だよ。そんなのは切な過ぎる…<僕>は、だから…だから…」
言葉が出てこなかった。泣きそうだった。やるせなさが、心を拘束していた。
足が震えて立っていられず、道に膝をついた。
不意の暖かさ…彼女に頭を抱かれていた・・・
「いいよね、傷の舐め合いでも・・・」
彼女の吐息が、<僕>の耳に掛かる髪を揺らす。
791 :タラオ〜Acceleration of The Blood〜:2007/01/16(火) 23:16:10 ID:Y/BgmghS
ホテルのドアが閉まる。二人腰を抱き合い、互いのおでこを合わせて視線を絡ませ、小さく笑いあった。
鮎美の吐息。甘い・・・
やさしいキス…徐々に激しく・・・絡み合う。
ベッドが遠い。必死の思いでたどり着いた。
傍から見れば無様だろうが、今はそんなこと関係ない。俺たち二人のみ。どうでもいい。
鎖骨におでこを押し付けながら、鮎美が俺のシャツのボタンをはずし始めた。上から、確実に一つずつ。待った。待てなかった。
ジャケットを投げ捨て、ボタンを引きちぎりながらシャツを脱ぎ捨てる。
彼女の背中側から、ニットをたくし上げ、剥ぎ、投げ捨てた。
ブラジャー。どうすればいい?ホック?ああ、わかっている。
無視して下から上に、強引にずらした。ホテルのぼんやりとした間接照明の中、
鮎美の双丘があらわになり、例え様もない美しさで…俺を魅了する。
・・・むしゃぶりついた。舐めて、しゃぶった。甘かった。彼女のにおい。鮎美のにおい。頭がいっぱいになった。
ふいに両肩を強く押され、引き剥がされた。口を尖らせて、悪戯っぽくにらむ彼女の眼。
やさしいフレンチキス・・・落ち着いた。今までの荒々しい感情が消失し、純粋な彼女への思いだけが、残っていた。
792 :タラオ〜Acceleration Of The Blood〜:2007/01/16(火) 23:18:27 ID:Y/BgmghS
彼女が俺の上にのしかかり、ジーンズのジッパーの金具を歯で咥えながら、ゆっくりとおろしていく。
「腰を上げて…」
俺が少し腰を上げ、体重を抜くと、彼女はジーンズとボクサーブリーフを同時に俺の脚から抜き取った。
悪戯っぽい眼で俺を見ながら、頬をすり寄せ、やさしくその口に含む。
・・・すでに限界だった。数十秒も持たず、爆発した。
彼女は黙ってその爆発を受け入れ、俺の腹に手をおき、身を起こして、柔らかく微笑んだ。ああ・・・
いつの間にか、彼女は身に着けていた衣服をすべて脱ぎ捨て、
俺の目の前に生まれたままの姿をさらしていた。綺麗だった。言葉にならない。
ゆっくりと近づいてキス。唇に、鎖骨に、肩に、乳房に・・・ありったけの思いを込めた愛撫。
傷つけないよう、やさしく、宝物をいつくしむように・・・
今までの経験や技巧?そんなものはもう忘れてしまった。今は、可能な限りの心を込める。ただそれだけでいい。
鮎美の吐息、もれ出る掠れ声。次第に荒く、切なさを帯びてくる。
手をやると、叢の奥は、もう十分に潤っていた。
793 :タラオ〜Acceleration Of The Blood〜:2007/01/16(火) 23:19:08 ID:Y/BgmghS
彼女の膝を開き、上から見下ろすと、瞳に溢れそうなほど、涙がたまっていた。
必死にこらえているのがわかった。・・・今までずっと我慢していたんだ…
その瞬間…俺自身は、急速に力を失っていった。
「ごめんな。いいよ、もう。わかったから。大丈夫だよ。」
彼女を抱き起こして、背と、頭に軽く手を置く。言葉じゃない。彼女に包まれる代わりに、出来るだけやさしく、包み込む。
役者不足かもしれないが、それでも俺のせいいっぱいを込めて。
「うぁ・・んん・・うぁああああああああああああああぁぁぁ・・・!!」
俺の肩の上で、あふれ出す嗚咽。
長い、長い号泣。涙と鼻水と、よくわからない液体でぐしゃぐしゃになりながらも、
彼女は、鮎美はたとえようも無いほど、美しかった。
愛とおしい・・・だから、泣き疲れて眠るまでやさしく抱きしめていた。
794 :タラオ〜Acceleration Of The Blood〜:2007/01/16(火) 23:20:10 ID:Y/BgmghS
眼が覚めると、傍らに彼女の姿はなかった。
ベッド脇のキャビネットに置手紙。女性にしては角ばった長細い時で、俺への感謝の言葉がつづられていた。
鮎美さん、感謝すべきなのは、助けてもらったのは、俺のほうだよ…
結びの言葉は「またね!」
互いにもう会う事はないことを、理解した上での「また」。彼女らしい優しさ。
キャビネットの上に、もう1枚のメモ紙。持ち上げると一万円札が零れ落ちた。
<学生があんまり無理しちゃ駄目ダゾ!!>
まったく・・・かなわないな・・・