三河屋Part2 

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part2目次------
マスオ 覚醒編 >>13>>18>>22  
イササカの失踪>>235-236
難物 〜幻の老兵〜


■「マスオ 覚醒編」            

13 :774RR:2006/01/27(金) 17:46:36 ID:0oBrkc0Q
土曜AM3:00 男はガレージで野獣の唸り声に似た低く獰猛なアイドリングを
奏でる愛機ZX-11の前にいた。
漆黒のレーシングスーツを見に纏った彼はサザエの知る「三河屋のサブ」では無い。
「湾岸のSABU」 彼は走り屋仲間から畏怖の念を込めそう呼ばれている。

SABUは暖機を終えた愛機に跨りヘルメットの中で微笑んだ。
(サザエの奴・・・今日は激しかったな。まるでコイツの様に官能的だったぜ)

黒き猛獣はSABUを乗せ狂った雄たけびと共に闇の彼方へと吸い込まれていった・・・


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18 :774RR:2006/01/27(金) 21:17:38 ID:0oBrkc0Q
夜の首都高を走るサブ。
昼間は決して見せる事の無い過激なライディングに追随できる者はいない。

スピードと言う名の快楽を貪る彼の脳裏にサザエの淫らな痴態がよぎる。  
(サザエは何故、あんなウダツの上がらない婿養子の妻になったのか?)
平凡を絵に描いたような男・・・オレとは住む世界の違う男・・・・

その時、愛機ZXの爆音とは異なるエグゾーストノートを耳にしてサブは我に返った。
「!!」サブはミラーを覗くが敵機の姿は無い。
(まさか・・・!!)
その刹那、スリップストリームから飛び出た真紅の機体が一気にサブの前に出る。
紅いハヤブサを駆るのは同じく真紅のライダースーツに身を纏う男。
背中に「魔 棲 雄」の縫い取りが見てとれた。

「魔棲雄・・・まさか、マスオだとっ!!?」


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22 :774RR:2006/01/27(金) 22:40:55 ID:0oBrkc0Q
黒いカワサキが背後でもがいているのがミラー越しに見てとれる。

彼は気づいていた。
爽やかな勤労青年の仮面を被った彼が、我が妻と情事を重ねている事を。
だが怒りは無い。むしろ感謝の念すらマスオは感じている。

over300、そこは死が手招きする悪魔の領域。
「魔に棲む男」マスオはかつてそう呼ばれていた。
だが、気づけば彼は平凡で退屈な世界の住人と化していたのだ。
それがサブによって戦士のプライドと野獣の闘争本能を呼び覚まされた。
「ありがとよ、坊や」
最速の猛禽類の名を冠したマスオの愛機がフロントを持ち上げ更に加速する。
まるで大空に羽ばたくかのように・・・(END)


■「イササカの失踪」

235 :774RR:2006/02/03(金) 13:59:14 ID:qoeHZchO
「伊佐坂先生ー?いないんですか?」
ノリスケは伊佐坂の家にいた。今月の原稿を受け取りに来たのである。
しかし書斎を見ても、作家の伊佐坂難物の姿は無い。
「あの人ってばまた逃げたのね。ごめんなさいねノリスケさん。後できつく叱っておきますから。」
難物の妻、お軽が呆れた口調でノリスケに謝罪する。
「先生はどちらに行かれたんでしょうか。」
このまま帰るわけにもいかず、かといって帰ってくるまで待つわけにもいかず、ノリスケはお軽にたずねる。
「おおかたバイクでぶらぶらしてるんでしょうけど、ちょっと待ってて下さいね。」

その頃、難物は若い頃から通い詰めた峠にいた。
空冷単気筒独特の排気音を響かせ、かなりの速度でコーナーを切り取っていく。
タイヤが悲鳴を上げ、グリップ限界を超えて走っていることが分かる。
難物が跨るのはSR500のカフェレーサーカスタムだ。
セパレートハンドルとバックステップは決して過激すぎず、難物の体格にあっている。
それ以外は比較的ノーマル然としたスタイルだが、
オイルクーラーとキャストホイールが伊達のカフェレーサーでないことを如実に物語っていた。
聞く者が聞けば、エンジンがかなりいじられていることも分かっただろう。
難物は時々、こうした無謀とも思える走りをしたくて堪らないときがある。
理由があるわけではない。ただ無性に疾走感に駆られることがあるのだ。
或いはそれは、作家でも父親でも夫でもなく、あえて言うならただの雄としての攻撃性の発露であるかもしれない。


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236 :774RR:2006/02/03(金) 14:00:08 ID:qoeHZchO
迫り来るコーナーを見据え、限界までブレーキを我慢する。
全力でブレーキをかけ、ギアを一つ落とす。
ハングオンでコーナーを曲がり、右手を大きく捻って加速する。
こうして走っていると、家族も仕事も全てなげうって、失踪してしまいたくなるときがある。
許されないことだ。難物も頭では分かっている。
一人きりで生きていくなんて事が出来るわけがないそれもわかっている。
どうしようもない衝動。この源は、あの疾走感と同じところにあるような気が難物にはしている。
このままどこかに行ってしまえとささやく獣と、馬鹿な真似はするなと諭す理性。
獣が理性に飛び掛ろうとしたとき、不意に上着のポケットが震えた。
驚いて挙動を一瞬乱しつつ、とりあえず路肩に止まりポケットを探る。
見たことの無い小さな携帯電話が入っていた。画面には家の電話番号が出ている。
ヘルメットを脱ぎ、エンジンを切ってからしばらく悩んで電話に出る。妻の声が聞こえてきた。
「もしもし?ノリスケさんがいらっしゃってますから、早く帰ってきてくださいね。
 うふふ、そろそろ逃げ出す頃だと思ってジャンパーに入れて置いたんです。」
ああ、かなわないな。この愛する女性を捨てて生きることなどおれにはできない。
難物は自然に思った。
「ああ。わかった。すぐに帰る。」
エンジンをかけ、来た道を戻る。先ほどと同じくらいにスピードは出ている。
しかし、難物の心は晴れ渡っていた。疾走感のような暗い気持ちはない。
家に帰ろう。難物にあるのはその気持ちだけだった。
SRの排気音が、楽しげに響き渡る。



難物 〜幻の老兵〜

57 :難物 〜幻の老兵〜:2006/03/14(火) 13:52:05 ID:/RZ59Lkd
漆黒の闇に染められた道を真っ白に照らすヘッドライト。うなるような轟音を発しながら、
首都高速環状線をオートバイが猛スピードで過ぎ去る。 

「・・・いい加速だ。」

赤いドゥカティ999Rを駆るのは、伊佐坂難物。
今夜は999Rが届いた日。初ツーリングも兼ねて環状線を飛ばしていた。
スピードメーターは軽く200Km/hの位置をオーバーしている・・・。
それでもクラウドはスロットルを緩めない。
もっと、もっと速く。このバイクの限界まで・・・。


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59 :難物 〜幻の老兵〜:2006/03/14(火) 14:18:21 ID:/RZ59Lkd
難物は進路を環状線外回りから深川線へと変え、甚六と
落ち合う場所に指定した辰巳PAで休憩に入った。

夜の首都高は走り屋のたまり場となる。
特にこの辰巳PAは走り屋の交流所みたいなもので、
ここに出る道路情報で今日の走る場所を見つけるのだ。
難物は自動販売機の前で缶コーヒーを飲んでぶらついていた。
その時、走り屋風の男が難物に近づいてきた。

「おい。あの赤のドカは、お前のか。」
「ああ、そうだが・・・何か用か?」
「見た目ノーマルだが、なんか雰囲気があるな。 こういうバイクって、
意外と速かったするんだよな。で、俺と勝負しねえか。」

辰巳PAではバトルをふっかけられることもたまにある。血気盛んな輩の集まりだからだ。

「残念だが今日は仲間と待ち合わせているんでね、また今度にしてくれねえかな?」

いちいち付き合ってられっかよ、と内心イラつきながら難物は男を追い出そうとした。

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61 :難物 〜幻の老兵〜:2006/03/14(火) 14:30:51 ID:/RZ59Lkd
だが、男は引き下がらなかった。 

「そういうわけにはいかねぇぜ。てめーみたいな年寄りの走り屋はむかつくんだ。 俺のRVF400と勝負しろ。」
「しょうがねぇ奴だな・・・」
「敗者が勝者に3万円払う・・・ってルールでどうだ? 」
「お前、随分と自信があるんだな。・・・で、コースはどうするんだ。」
「有明JCTからつばさ橋まででどうだ?」
「・・・湾岸線か。馬力の少ないRVF400でよく・・・。お前が先行しろよ。」
「そういう考えは、後で痛い目あうぜ。」

このコースなら好都合だ・・・と難物は微笑んだ。難物はある程度このバトルに自信がある。
直線だらけの湾岸なら、かなり余裕で勝てると甘んじていた・・・


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