1-23 マスオ物語 

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878 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/13(木) 23:49:38 ID:FbMvhP8T
【SCENE81】
その夜、ボンカレーをアナゴ君の炊いた固くて不味い米で食べると、缶ビールを片手に3人で小さな宴に興じた。

アナゴ君は、僕が東京を発った二日後には、イナダモータースで1100カタナの契約書に判を捺していたらしい。
納車されたのは、なんと北海道へ出発の日。
代車であるオヤジさんのスーパーカブに括り付けたツーリングの荷物をイナダモータースの店先で新しい愛車に括り付けなおすと、そのまま青森に向かって鈴木さんと共に出発したらしい。
新車慣らしの必要の無い中古車とはいえ、なんと無謀な男だ・・・。

「やっぱり、1100はいいね!速いぜ!」

アナゴ君の新しい愛車に対する賛辞の嵐は収まる事がことが無かった。
・・・いや・・・、その不自然なほどのはしゃぎ振りはあえて以前の愛車である750カタナの話を避けているようにも思えた・・・。

僕もまた、750を修理せず1100を選択した理由について深く聞くことを止めた。
僕には彼の気持ちが解るような気がしたからだ。

僕もまた、決して飽きたわけではないヨンフォアを手放した過去を持つ。
それは、スピードを追い求める僕にとって、ある意味当然の成り行きであり、また自分勝手な選択でもあった・・・。
イナダモータースでヨンフォアと別れた時、ある種の後ろめたさからその姿を正視出来なかった・・・。

それに、おそらくアナゴ君には、愛車に無理を強いて壊してしまったという意味合いでの後ろめたさもあったのだろう。
アナゴ君から言葉としてその時の心境を聞いたことは無いが、ブロー直後の彼の様子を見れば、想像に難くない・・・。

それに、そもそもバイクは楽しんで乗るものだ。
心を解き放つ為に生まれてきた乗り物に、必要以上に重々しい心を縛り付けてはいけない・・・。
愛車に不誠実でなければ、そして時に不本意にも愛車を傷つけてしまった時には自らの未熟を反省すればそれでいい。
僕は、乗り換え自体を愛車への不実であるとは思わない。


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879 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/13(木) 23:50:37 ID:FbMvhP8T
おそらくはアナゴ君の心の深層で完全に溶け切ってはいないであろう750カタナへの想いを癒そうと、僕はこれまでの一人旅の思い出を披露した。

『主』の話をすると、アナゴ君は我が事のように怒り出し、僕はその場に彼が居なかった事に安堵した。
インディアンチーフの男性に話が及んだ際は、鈴木さんが「それ、俺が3年前に会った人じゃないの?」と言い出し、バッグから『Good Luck!』と書かれたバンダナを取り出しては、僕が貰った『Easy Go!』と全く同じ筆跡である事に、世の狭さを感じた。

アナゴ君や鈴木さんと離れていたのはたった10日間余りだったが、僕は3人で居るこの空気を非常に懐かしく、そして暖かく感じた。
一人になる事で知った孤独の意味・・・。そして、仲間の大切さ・・・。そんな風に久方振りの楽しい夜は過ぎて行った・・・。

たくさんの旅の思い出を披露した僕だったが、終ぞ開陽台での彼女との思い出を話すことは無かった。
・・・甘く切ない初恋の想い出は、僕一人の胸の中に・・・。



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880 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/13(木) 23:51:59 ID:FbMvhP8T
翌日、狩勝峠でアナゴ君と1100カタナのニューコンビの恐るべきパワーが炸裂した。

速い・・・。迫り来る中速コーナーの切り返しをヒラリヒラリと・・・。
高速コーナーを銀色の弾丸のように・・・。
疾駆するカタナとアナゴ君は、事も無げに僕を置き去りにしようとする。なんて速いのだ。

ニューマシンとはいえ、やはり以前の愛車と同じカタナ。
いや、もしかしたら本来1100ccで開発された本当の姿のカタナとの組み合わせによって、アナゴ君の本当の速さが引き出されたのかも知れない・・・。
そんな事を考えているうちに、鈴木さんにまで置いていかれた。

「どうしたんだ、フグタ君!?直線路ばっかり走ってて鈍っちまったのか?」

峠での休憩で、そう僕をからかうアナゴ君の笑顔が小憎たらしかった。
僕がこれほどまでにアナゴ君に走りで差を付けられる理由は、アナゴ君の速さだけでは無いことは解っていた。
・・・彼女との別れ以降、思うに任せないライディング。
未だ僕はスランプの中に居た。実は、僕はそれをやや深刻なものとして受けとめていたのだ・・・。

ちっとも楽しくないコーナーリングに焦りばかりが募り、二度と気持ちよく走る事が出来なくなったらどうしよう、と内心では悩んでいたのだ。


しかしそれは杞憂に過ぎなかった。
その日、アナゴ君の背中を見て走っているうちに少しずつ走りの勘を取り戻していった僕は、その日幾度目かのワインディングを走る頃にはすっかり以前の自分の走りを取り戻していた。
彼と箱根ターンパイクで再会し、そして共に走った東京への帰路を思い出す・・・。
あの日、僕は初心者にも関わらず、彼の後ろを走るだけでまるで引っ張られるかのように心躍るライディングが出来た・・・。

そしてこの日も、乱れた心で見失っていた自分自身の走りをいとも簡単に取り戻す事が出来た。
やはり、彼は僕にとって最高の相棒だ・・・。
夕暮れのワインディングを、僕はいつまでも彼と走っていたいと思った・・・。



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881 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/13(木) 23:52:47 ID:FbMvhP8T
その日の夜、月明かりに照らされたテントサイトで、缶ビールを数本あけたところで鈴木さんがおもむろに僕とアナゴ君に向かって語りかけた。

「・・・二人とも、将来は決まっているのかい? なりたい職業とか、入りたい会社とか。」

突然の鈴木さんの言葉に、僕とアナゴ君は顔を見合せた。
僕は真剣に将来について考えた事など無かった。まだ大学二年・・・。
呑気な僕にとって、それはもの凄く現実感の乏しい、遠い未来の事に感じた・・・。僕は答えた。

「いえ、特にまだ決めてはいないですけど・・・」

アナゴ君も僕と同じ答えだった。思えば僕らは、この楽しいバイクライフに傾倒する事で、近いうちに迫る社会への巣立ちという大いなる決断を面倒事とみなし、目を背けていたのかも知れなかった。

「・・・そうか」

鈴木さんはそう呟くと、一呼吸置いて言葉を続けた。

「僕の会社、事業拡張に向けて動いているんだ。
人事部に同期入社の奴がいてね、優秀な新入社員を欲しがってるんだ。
まだ先の話しだし、キミ達からしてみればピンと来ないかも知れないけど・・・。
どうだい?大学を卒業したらウチの会社に来ないかい?」


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882 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/13(木) 23:54:40 ID:FbMvhP8T
突然の話に僕達は驚いて言葉を失った・・・。
ちなみに、1984年当時はさほど景気は良くは無く、就職活動も決して売り手市場と言う訳では無かったのだが、その数年後に訪れたお祭り騒ぎのようなバブル景気を思うと、鈴木さんの会社は来たるべく好景気に向けて、先を見通した人材収集を行っていたのだろう。

しかしながら、僕らは将来のことなど少しも省みず、バイクに熱を上げる刹那的な学生生活を送っていた愚かな若者だったので、そんな鈴木さんの言葉に即答できるはずも無い。
困っている僕らを見て、鈴木さんは笑って言った。

「ハハハ!突然こんな事言われても困っちゃうか!」

僕もアナゴ君も、将来の事などをちっとも考えていない事を鈴木さんに知られ、少しだけ恥かしくて下を向いていた。
そんな僕らの様子を鈴木さんはお構い無しの様子で言った。

「まぁ、有能そうな学生に当ては無いか?ってその同期の奴に頼まれた事もあるんだけど、僕個人的にもキミ達と同じ勤め先になれれば、この楽しい時間がずっと続くような気がしてね・・・。」

そして、最後に付け足すように鈴木さんは言った。

「ウチの会社は海山商事っていう商社さ。悪い会社ではないぜ。
まぁ、僕が言った事、頭の片隅にでも置いておいてくれよ。」

鈴木さん、そして最高の友アナゴ君とずっと一緒に居られる・・・。
若かった僕にとって、突然のその話は非常に魅力的な誘いに思えた・・・。



・・・それが、儚く、そして哀しい願いになるという事に気がつきもせずに・・・。


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928 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/18(火) 00:37:31 ID:MwcZxc5F
【SCENE82】
社会人の夏休みとはなんと短いのだろう。鈴木さんが東京に帰ってしまう日が、もう近づいていた。
一週間程度の休みの中で、北海道までの往復に3日ほどを費やせば自ずと道内を回っていられる時間も決まってくる。

そんな社会人鈴木さんの束の間の自由の日々を目の当たりにした僕は、数日前に期せずして彼に突きつけられた大人への選択肢を、やはり出来るだけ後回しにしたい面倒事であると感じていた・・・。

しかし、何故、楽しい時はこれほどまでに早く過ぎ行くのだろう・・・。
北海道に来てからというもの、一日が異常に短く感じる。

早朝の朝もやの中を駆け、幾つかの山岳路と何度走っても飽きる事のない雄大な直線路を夢中で走ると腹時計が正午近い事を報せる。
腹を満たした後、再び走り出せば海や山や大地が織り成す絶景を見つけしばし声を失う。
そしてその光景はいつしか夕暮れに包まれてゆく・・・。

そして、鈴木さんが東京に帰る日がやってきた。

「オフ車じゃキミらに着いていけないからな。来年もCBで来るしかないなぁ」

鈴木さんはそう言って笑った。そして、僕らは函館方面へ走り去る鈴木さんの後姿を見送る。

・・・僕は当たり前の事だと思っていた・・・。
また来年も当然のようにこの3人で北海道を駆け巡るのだと思っていた・・・。
その、当然だと思っていたとりとめの無い日々が、今にして思えば幾ら望んでも、足掻いても、二度と手に入れることの出来ない珠玉の如き幸福の時であるという事に、その時は気がつくはずも無かった・・・。

楽しき時は、早く過ぎ行く・・・。それは時にあまりにも残酷に・・・。
眩く光り輝く陽光も、いつしか西の空に落ち、そして漆黒の闇に包まれる夜が訪れる・・・。それを知るには僕らはまだ若すぎた・・・。


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929 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/18(火) 00:38:52 ID:MwcZxc5F
鈴木さんが帰京して数日後、アナゴ君が突然言い出した。
「おい、フグタ君。俺、摩周湖が見てみたいなぁ。フグタ君は行ったんだろ?」

僕は飲んでいたビールを吹き出しそうになった。摩周湖といえば・・・彼女との思い出の地だ・・・。失恋の傷もまだ癒えぬのに、その思い出が色濃く残る場所に行きたいとは思わなかった。

「わ・・・わざわざ見に行くほどのものでも無いと思うよ?」

「あれ?この前は凄くキレイだったって言ってなかったっけ?」

「そ・・・そうだっけ?他にもいい所はたくさんあるんだから違うところにしないかい?」

僕がそう言うと、アナゴ君は訝しむような目を僕に向け言った。

「なんかおかしいなぁ、どうして俺に摩周湖を見せたがらないんだよ?」

・・・完全に怪しまれている・・・。これ以上、アナゴ君を摩周湖に行かせないように差し向けようとするのは返って不自然だ・・・。
そして僕は、不本意ながらもこの旅3度目の摩周湖行きが決定したのだった。


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930 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/18(火) 00:40:19 ID:MwcZxc5F
翌日、僕とアナゴ君は摩周湖展望台に向け峠を駆け上がっていた。
ほんの10日ほど前に、彼女と走った思い出の道・・・。
しかし、その時の光景と唯一違うものがあった・・・。天気だ。

僕は前夜から、北の大地を統べるカムイたちに願いをかけていた・・・。
どうか、どうか、摩周湖に霧をかけて下さいと・・・。

アナゴ君には大変申し訳ないが、彼女との思い出がまだ生々しく残るこの美しき風景を、垂れ目と厚ぼったい唇が暑苦しい男と共有したくは無い・・・。
僕はアイヌの神に好かれているらしい。
摩周湖展望台に近づくにつれ、霧が濃くなってくる。・・・そうだ、いいぞ!霧!!

「なんだよ〜これ!なんにも見えないじゃねーか!」
かくして、摩周湖展望台は視界ゼロ。美しき湖は暑苦しい男にその姿を晒す事は無かった・・・。

「いやぁ、残念だったねアナゴ君〜」
僕はニヤニヤしながら彼の肩を叩く。・・・摩周湖のジンクスを信じれば、僕は彼より出世しない事になるが、この際
そんな事はどうでも良いのだ。僕は清き想い出が守られた事に安堵した。

しかし、それも束の間。アナゴ君は再び驚きのセリフを吐いた。
「じゃ、今晩は開陽台でキャンプしようぜ!」

・・・まるで僕の秘め事を見透かしているかのような彼の言動に、僕は再び考え直すように提言したが、やはり再び怪しまれ、結局開陽台に行く事になってしまった・・・。


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931 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/18(火) 00:41:22 ID:MwcZxc5F
ほどなくして到着した開陽台。まるで、あの日のままだった・・・。
僕と彼女の過ごした空気が、まだそこに残っているかのようだった・・・。
彼女がまだそこに居るかのようで、僕はキョロキョロと周囲を見回したが、もちろんその姿があるはずも無い。

意識して、彼女とテントを並べた場所から離れたポイントにテントを張った。今日、テントを並べるのは・・・暑苦しい男。
展望台からの眺めに、「地球が丸く見えるぜ!すげぇな!よぅ、フグタ君!」と騒がしい・・・。
少しは彼女の慎ましさを見習うがいい・・・。

「おい、フグタ君。今日はあそこでメシにしようぜ!」

そう言って、アナゴ君が指差したのは僕と彼女が食事をしたレストラン。・・・もうイヤだ・・・。
僕はアナゴ君に続いて、伏し目がちに店内に入ったのだが、すぐに女将さんの目に着いてしまった。

「あら?お兄さん、今日は男の彼氏と?」
そんな女将さんのからかいの言葉を聞いたアナゴ君は、少しポカンと考えたかと思うと、

「・・・ははぁ〜ん」
と言って、ニヤニヤと笑った。・・・もう勘弁してくれ・・・。


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932 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/18(火) 00:44:29 ID:MwcZxc5F
忘れようとしていた彼女との想い出が、その場所に戻って来たことで再び痛烈に胸を刺す・・・。
彼女の言葉・・・。涙・・・。そして笑顔・・・。脳裏に蘇り、そして膨らんでゆく・・・。
その夜、眠れなくなった僕は、一人テントを出て暗闇の中、展望台に登った。

空を見上げて僕は絶句した・・・。もの凄い星の数・・・。
無限の星がきらめく夜空は、美しさを超えた圧迫感で傷心の僕に迫った。

僕は歌詞そのままのシチュエーションで坂本九の歌を口ずさんだ。
中学、高校と内気な少年時代を過ごした僕にとっての愛唱歌。
流行の曲には全く疎かったが、彼の歌は好きで、辛い事があるたびに歌っていた・・・。
バイクに乗り始めてから、めっきり歌う事は無くなったが・・・彼女を思い出し、自然に口ずさんでいた・・・。

今頃、彼女はどうしているだろう・・・。
連絡先ぐらい聞いておくべきだったかな?と物悲しいメロディーと共にどうにもならない過ぎ去った過去に想いを巡らした・・・。
彼女に貰ったキーホルダーをポケットから取り出し眺め、深い溜息をついた・・・。その時だ。

「よう、眠れないのか?」
アナゴ君が背後に立っていた。


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933 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/18(火) 00:45:23 ID:MwcZxc5F
「俺も考え事してたら眠れなくてさ」

「考え事?」

「将来の事さ・・・。鈴木さんが言ってただろ?あの事だよ。」

意外だった・・・。神経の図太そうな彼が、将来の事を真剣に考えている事に。

「まだ先のことなんて解らないけど・・・。
俺さ、フグタ君と一緒に仕事をして、そしてこうやっていつまでもバイクに乗っていられるとしたら、すごくいい誘いかな?って思ってるんだ・・・。」

「アナゴ君・・・」

「親友と一緒にずっと居られるなんて最高じゃないか」

親友・・・。僕は彼のその一言に涙が出そうになった。
・・・そうだ、こんな風に心が傷ついた時も、僕は一人じゃない・・・。
僕は少年時代からずっと一人だと思っていた・・・。
そして、上京してもその通りに一人で部屋に篭っていた。

だが、僕を暗い部屋から連れ出し、バイクを教えてくれたこの男は、僕の事を「親友」と呼んでくれた・・・。
僕もまた、彼とともにいつまでもバイクに乗って走っていたいと思った・・・。

「ま、キミは女の子のことでも考えていたんだろうけどな!」

そう茶化され赤面する僕を、アナゴ君は笑った。無限の星の下、僕の将来が少しだけ形を確かなものにしたその夜・・・。


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934 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/07/18(火) 00:46:34 ID:MwcZxc5F
8月末。そろそろ帰る雰囲気になり始めていた僕らは、先に帰京した鈴木さんに電話を掛けた。
鈴木さんから伝えられた情報は、僕らを第三京浜の戦士へと戻らせるものだった。

「出たぜ、『ノリスケ』が・・・。軍曹が負けたらしい。」

公衆電話の受話器を置いたアナゴ君の眼が、リベンジの炎に燃えていた・・・。
その日の第三京浜は、一般車両で混雑した特殊な状況だったらしいが、それでもあのレッドすら打ち破る速さを備えた『ノリスケ』現るの報は、僕とアナゴ君のスピードに魅せられた魂を揺さぶるに充分だった。

一度火の点いたライダーの闘争心は、消す事など出来なかった・・・。
その数日後、僕らは北海道を後にした。


さまざまな思い出。そして、さまざまな人達の顔を胸に、僕は北の大地を後にする・・・。

・・・さらば北海道。この旅で出会ったたくさんの人達は、今頃何処を走っているのだろうか・・・。

Ninjaのキーにぶら下がったニポポ人形が、トップブリッジで揺れていた。


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