1-15 マスオ物語
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372 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/05/03(水) 00:07:02 ID:9QsImVkX
1984年7月29日。
灼熱の太陽がアスファルトを焦がす鈴鹿サーキットに僕とアナゴ君、そして鈴木さんは居た。
前日から現地入りしていた僕らはサーキット周辺にテントを張り、決勝当日は早朝から自由席の少しでも良い席を取る為、陣取っていた。
ウォームアップ走行の時点から、明らかに市販車とは音圧の異なる轟音を響かせながら、目の前を猛スピードで通過していく初めて目の当たりにするレーサーの迫力に圧倒され、転倒するのではないかと傍で見ていてもヒヤリとさせるバンク角でコーナーをクリアしていくライダーのテクニックに驚愕した。
そして始まった決勝レース・・・。
もちろん僕らはそれぞれの愛車のメーカーを応援した。
しかしながら1984年は、それまで1000ccだったレギュレーションが750ccに変更された初年度であり、それに対する体制の不備により僕が応援すべきカワサキは、ワークス活動を休止。
プライベーターがGPZ750で出場するもスターティンググリッドの時点で10位が最高位という、やや心許ない布陣であった・・・。
体制の不備からワークス活動を休止していたのは、アナゴ君が応援するスズキも同じであったが、彼の声援の先にはあの『ヨシムラ』が居た・・・。
カタナと同じGSXの名を冠する、GSX750ES改をアナゴ君は我が事のように応援する。
そんな僕らを尻目に、鈴木さんは余裕の表情。
彼の応援するホンダワークスは、新型のV4レーサー『RS750R』をなんと6台も投入し、必勝体勢。
そんな磐石のホンダワークス陣営に、予選3位で割って入ったヨシムラはやはり流石といったところだ・・・。
先頭集団が目の前を通り過ぎる毎に、腕を突き上げ、声を張り上げ汗だくになって応援するアナゴ君と、腕組みをしながら黙々と時折ニヤリと笑みを浮かべながらレース展開を見守る鈴木さん・・・。対照的な二人だった・・・。
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373 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/05/03(水) 00:09:36 ID:9QsImVkX
とにかく暑い真夏の鈴鹿サーキットで、僕達は流れる汗も拭かず夢中でレースの虜になった・・・。
気がつけば、僕も大声を上げて真夏の祭典に興じていた・・・。
引き篭もりかけていた去年の春の事など、まるで自分ではない誰かの過去のようだった・・・。
今でも思い出す、数少ない青春時代の真夏の思い出・・・。
その時はこれから先、毎年のようにこんな風に熱い夏を過ごすのだと信じて疑わなかった・・・。
幸せだった・・・。
レース中盤、ヨシムラがエンジントラブルでコース上から姿を消した。
アナゴ君は「うおぉぉぉ!」と慟哭し、ホンダワークスが1位から3位までを綺麗に並べ立てた事に鈴木さんはご満悦。
そして、レースが終わる頃、僕達は精魂尽き果てていた・・・。
ホンダの圧倒的勝利だったが、夜空に打ち上がる花火を見ていると、8時間の長丁場を見届けた想いの方が強く、結果以上の何かが胸に押し寄せてきた・・・。
また一つ、バイクを知って良かったと思える瞬間にめぐり合えた・・・。
初めての鈴鹿8耐が終わった・・・。
僕達はそのまま東京に帰る。
鈴木さんは明日の月曜は会社があるし、僕らは明後日から北海道に出発する。
3人とも多忙な夏だ。
往路は、延々と下道で三重県までやってきた僕らだったが、時間的・体力的問題から豪勢に高速道路で帰路に着く事になった。
疲れ果てていた僕らは、もうその日は高速でゆったりと東京に帰るだけだと思っていた・・・。
・・・しかし、東名自動車道で遭遇した一台のバイクがそれを許さなかった・・・。
鈴鹿8耐の興奮冷めやらぬ7月末の深夜・・・。僕達の耐久レースはこれから始まるのだった・・・。
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420 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/05/04(木) 23:18:43 ID:YA2fuVoR
【SCENE59】
日曜夜の東名自動車道上り線は予想以上に混雑していた。
渋滞というほどではないが、途切れる事の無いクルマの列。
おそらく僕らと同じ鈴鹿帰りであろうたくさんのバイクはICをひとつ過ぎる度に少なくなっていったが、クルマの多さが変わることは無かった。
特にトラックが多い。
僕らはその鬱陶しいクルマの群れを縫うように140km/h程度の速度を保ちつつ巡航していた。
昼間ほどでは無いにしろ真夏の重苦しい熱い空気中で、レース観戦の疲れも手伝っていつものように飛ばす気にはなれなかった・・・。
延々と足元を流れるアスファルト路面・・・。
行く先に無限に続くようなオレンジ色の道路灯の列・・・。
ひたすら淡々と走った。
追い越し車線上を封鎖する如く黒煙を撒き散らしながら走る忌まわしきトレーラーを、左に身を翻し中央車線で並ぶ。
中央車線でトレーラーの左斜め前方を走る、商用ワゴンのテールが迫る。再び追い越し車線に戻り、トレーラーの前へ。
・・・そんなライディングの繰り返し。ただ東京へ辿り着く為のライディング・・・。
どのくらい走っただろう・・・。
あと2時間もしないうちに日付が変わる。僕らは牧の原SAで休憩を取った。
海が近いのか、少しだけ風が心地よく感じた。疲れた体に缶コーヒーが染み込んでいく・・・。
疲れてはいたが、先ほど終わったばかりの8耐の興奮からか、はたまた明後日から出発する北海道ツーリングへの期待感からか、眠気は無かった・・・。
再出発前に、SA内のガソリンスタンドで給油する。東京までは持つだろう。
3台が給油を終えたのを確認し発進する直前、後方確認の為に覗いたバックミラーの中に、スタンドに入ってくるバイクの姿が見えた。
が、その時は特にそれ以上を気にするまでも無く、僕らは再び本線上へバイクを進ませた。
先ほどとなんら変わらぬ、淡々としたライディング・・・。
しかし、それは牧の原SAを出発して5分ほどしての事だった。
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422 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/05/04(木) 23:20:32 ID:YA2fuVoR
中央車線で3台の先頭を走る僕の右。爆音と共に追い越し車線を一台のバイクが掠め飛んで追い抜いていった。
僕は初め、それをアナゴ君だと錯覚した・・・。なぜなら、そのバイクはカタナだったからだ・・・。
それがアナゴ君ではないとハッキリしたのは、そのバイクを追うように見慣れたGSX750Sカタナと、見慣れた姿のアナゴ君が、やはり僕の右側を追い抜いていったからだ。
状況を把握した僕は、反射的にスロットルを開け増していた・・・。
理屈など無い。
ヤル気を感じさせるバイクが自分を追い抜いていった・・・。
スピードに魅了されたバイク乗りが、スロットルを開ける理由としては十分過ぎるものであろう・・・。
やはりクルマが多い為、スピードは思うに任せない。
が、その状況の中でも出来る限りの速度を出しクルマの群れを縫って走る正体不明のカタナ・・・。
アナゴ君も僕も、同じようにクルマをパスし、そして追う。
アナゴ君が同じカタナであるその相手に、対抗意識を燃やしている事は後ろからでも良く解った。
夜間で、なおかつ十数メートル離れている事もあり、そのカタナの排気量は解らなかった・・・。
ただ、社外マフラーとはいえその音圧、そして言葉では表現しにくいのだが、特に加速時に発する雰囲気から察するに、おそらく・・・。
その乗り手すら知る由も無い正体不明のカタナについて、その段階で明確に確認出来た事が二つだけあった・・・。
まず一つ目はナンバー。
ナンバープレートは45°ほどに跳ね上げられていたが、確かにその管轄地は『福岡』だった・・・。
そして、もう一つ。ライダーの背中に縫い付けられた文字・・・。
そのライダーの黒い革ジャンの背中に、その日アナゴ君が声援を送っていた『ヨシムラ』のロゴと全く似た字体で真っ赤な4文字が縫い付けられていた・・・。『ノリスケ』と・・・。
5分ほどで走りきってしまう第三京浜とは違う。東京まで150kmを遥かに超える耐久バトルが始まった・・・。
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452 :774RR:2006/05/07(日) 09:13:13 ID:tVxqQnJk
【SCENE60】
右へ、左へ・・・。たくさんのクルマの群れを縫うように疾走する『ノリスケ』。
そして、それを追うアナゴ君と僕・・・。
鈴木さんのヘッドライトが遠ざかる・・・。
今頃、「あいつら、しょうがねぇなぁ」というような顔で、ヘルメットの中で苦笑していることだろう・・・。
状況にもよるが、150〜180km/h付近でのバトル。
クルマが多いため、なかなかそれ以上を出す事は出来ない。
停止しているかの如く猛烈な勢いで迫る前車のテールライト・・・。
手が届くほど近くで回る巨大なタイヤの脇をすり抜けトレーラーの前へ・・・。
尋常ならざる勢いで接近する僕達の気配に進路変更で車線を譲ろうとするクルマに、逆に行く手を塞がれそうになる・・・。
余計な事はしなくていい!おとなしくそこに居てくれ!!
前を行く『ノリスケ』は確かに速かった・・・。
クルマの流れに少しでも隙があると見れば、躊躇せず切り込んでいく。
その走りは豪快そのもの・・・。アナゴ君に似たところもあるだろうか・・・。
そして、アナゴ君のほうも負けてはいなかった。
いつもに増して気合が漲っているように感じる・・・。やはり同じカタナだからであろう。
アナゴ君のカタナに傾ける情熱と拘りは相当なものであるが、そんなアナゴ君が同じマシンに乗る相手に負けたくないと思うのは当然のことであった・・・。
相手の排気量は、おそらく1100ccだろう・・・。
明らかにアナゴ君のカタナよりも骨太な加速をする・・・。
しかし、この一般車両が多く、最高速度で勝負できない状況下において、それは必ずしも決定的なアドバンテージでは無かった。
その証拠に、アナゴ君が『ノリスケ』から引き離されることはただの一度も無かったからだ。
そのアナゴ君の気迫に、僕は無意識のうちにこのバトルに積極的に関わる事をいつしか避けていた・・・。
『ノリスケ』はアナゴ君の獲物だと感じていたのだ。
付かず離れずの位置・・・といえば聞こえは良いが、最新型Ninjaをもってしてもこの状況では僕にも余裕は無かった。
その位置から、僕はこのバトルの行く末を見守ることにした・・・。
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453 :774RR:2006/05/07(日) 09:16:27 ID:tVxqQnJk
クルマの群れをどのように処理するかが、勝負の分かれ目のように思えた。
空いている車線に単純に飛び込んでもその先でトラックが行く手を遮っている場合もある。
3台先、5台先のそれぞれの車線のクルマの分布状況や、微妙な流れの違いによりこの先発生するであろう隙間を次々と予測して行かねばならない。精神をすり減らす神経戦・・・。
そんな時、ふと気がつくとミラーの中にCB1100Rのヘッドライトが写っている事に気がつく。
・・・鈴木さん・・・本当に油断ならない人だ・・・。
息を止めて由比の高速コーナーを駆け抜ける・・・。
上京する時、凄まじく速いと思っていた東海道新幹線がゆっくりと僕らを追い抜いていくのが、防音壁の隙間から一瞬確認出来た・・・。
どれほどの距離を走ったのだろう・・・。
そんなバトルは既に100km近くに及んでいた・・・。
御殿場を越える頃、夜も遅くなってきたことも手伝ってか、クルマの数が減少してきた・・・。
僕らの速度も少しずつ上がっていった。
・・・マズイ・・・。そろそろアナゴ君が苦しくなる車速だ・・・。
僕はたびたび心配の目を前方を走る彼に向けたが、アナゴ君はお構い無しでスロットルを開けていた・・・。
そろそろ平均スピードは200km/hを超えそうであった・・・。
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454 :774RR:2006/05/07(日) 09:17:14 ID:tVxqQnJk
僕らの中で最も非力であろう750ccのカタナでも、アナゴ君は少しも退くことなく『ノリスケ』に喰らいついていた・・・。
圧倒的と思われる戦闘力の差でも、『魂』というカタチにならない精神的な部分で補える可能性があることは、アナゴ君の走りだけでなく、その日鈴鹿サーキットで6台のホンダRS軍団に市販ベース車で予選3位に割って入り、レース中盤までそのポジションを保っていたヨシムラが実証済みである。
アナゴ君がそんなヨシムラを声の限りに応援していたのは、自らの乗るバイクと同じメーカーの車両であるという事以外にも、弱者が強者に挑み、時に一撃を与えるその姿に彼なりの美学を感じたからなのであろう・・・。
しかし、若いアナゴ君は忘れていた・・・。
弱者が強者と戦うとき、その抱えるリスクには何倍もの違いがあるということを・・・。
バイクというエンジンで動く機械である以上、絶対的に精神力だけでは補えない領域が存在するということを・・・。
強者ホンダに果敢に挑戦し、持てるポテンシャル以上の力で戦ったヨシムラGSXが、どんな結末を迎えたのかを・・・。
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485 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/05/09(火) 23:36:20 ID:CeI/+CoV
【SCENE61】
海沿いを離れ、御殿場を過ぎた東名自動車道上り線は、箱根の山間を北側から抜けるワインディングルートへ。
ワインディングとは言っても、そう感じているのは僕らだけなのだろう・・・。通常の速度で走る一般車両からしてみればその表現は理解に苦しむものなのかも知れない・・・。
しかし、闇に横たわる大蛇の背のように右へ左へうねる東名自動車道は、ワインディング以外の何物でもなかった。
日付が変わりかけた深夜。
クルマは少なくなっていたが、そんなワインディング区間ではおいそれと200km/hを超える速度を出せるものではない。
僕は先刻、アナゴ君に対して抱いた不安感を取り越し苦労だと思い直した・・・。
深夜の東名道を流れ行く4本の光の筋・・・。漆黒の闇に消え行くコーナーの先をヘッドライトの光が次々と切り開いていく。
一番風を切る『ノリスケ』・・・。
ワインディング区間では、その『ノリスケ』を凌駕せんとする勢いでピッタリと背後を伺うアナゴ君・・・。
そして、僕の後ろにはその極上の深夜のパーティーを眺める事を楽しむかのように一定距離を保つ鈴木さん・・・。
まただ・・・。また、あの感覚・・・。
レッド達とバトルを繰り広げたあの日のようなあの感覚・・・。
鈴鹿8耐観戦で疲れているはずの僕を、言い知れぬ心地よさが包んでいた・・・。
・・・追い抜かれたということに対し、反射的に『ノリスケ』を追いかけた僕ら・・・。
その原動力はもちろん毎度ながら「悔しい」とか「負けたくない」という単純な競争意識からなのだが、走るうちにそんな意識はいつの間にか忘れてしまい、何処の誰かも知らぬその相手に対し、不思議な連帯感が生まれてくる。心通い合う悦び・・・。解り合える幸せ・・・。
気の合う仲間二人・・・。そして、見知らぬ手練・・・。
繰り広げられる超高速の宴。こんな贅沢な時間が他にあるだろうか?
もっとも僕の前を行くアナゴ君は、そんな思いの他にも『ノリスケ』に対する彼なりの拘りがあった。
同じカタナに乗るものとしての誇りとプライド・・・。
おそらく1100ccであろう『ノリスケ』のカタナに挑戦し、そして勝つことがその時のアナゴ君を突き動かす原動力だったのだろう。
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486 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/05/09(火) 23:37:22 ID:CeI/+CoV
時に漆黒の夜空をそれ以上の黒い影で隠していた山肌が、その稜線を徐々に低くしていく・・・。
僕達は関東平野に入りつつあった。
緑色の距離表示板に『厚木』や『川崎』、そして『東京』といった聞きなれた地名が多く現れるようになってきた。
そして、東名自動車道のコーナー半径は大きくなっていく。
静岡県から長らく続いた『ノリスケ』とのランデブーも、オーバー200km/hの狂った超高速バトルで締めくくりを迎えようとしていた・・・。
車速が上がる・・・。200km/h・・・、210km/h・・・。僕は深く潜り込んだスクリーンの中で、ある違和感に囚われて
いた・・・。アナゴ君のカタナはこれほどまで速かったであろうか・・・?
いつもなら速度上昇が止まる215km/h付近を超え、アナゴ君のカタナの車速は220km/hに達しようとしていた・・・。
・・・とにかく何かが違った・・・。それはアナゴ君の鬼気迫る走りのせいだけでは無かった・・・。
いつもと異なる『何か』に対する不安、予感・・・、そして気味悪さ・・・。
あるいは僕は、友を止めるべきだったのかも知れない・・・。
いつもの走りには無い『違和感』。
それは、その先に何があるかまでは解らないにしても、その本能が忠告する『予感』というものは、ほとんど間違いなく確かである・・・。
しかし、まだ若く経験値の少なかった僕にとって、その『予感』は走りを止めるほどの重大な警告という認識が無かった・・・。
それは若い僕らに起こるべくして起こった出来事だったのだ・・・。
『ノリスケ』はさらに速度を上乗せしていく・・・。
もう彼のカタナの排気量が1100ccであることに疑いを持つ余地は無かった。
しかし、アナゴ君はそれでも付いていこうとする・・・。
スクリーンに深く体を沈め、襲い来る空気の壁から身を隠す僕の耳に、股下で唸るエンジン音と共に、左斜め前を走るアナゴ君のカタナの、叫び声にも似たエキゾーストノートが聞こえていた・・・。
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487 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/05/09(火) 23:39:54 ID:CeI/+CoV
違和感は明確な疑問に変わった。何故、アナゴ君のナナハンカタナがこれほどまでに速いのか・・・。
今までのアナゴ君は実力を出し惜しみしていたのか?イヤ・・・、そんなはずは無い・・・。
何故、今日はこれほどまでに速いのだ・・・!?
そんな疑問に包まれたアナゴ君の全開走行の左斜め後方を走って、既に10分ほどが経っていた・・・。
そしてそれは厚木ICを過ぎ、横浜町田ICまでおよそ3kmの地点で起きた・・・。
おそらく230km/hを超えていると思われる『ノリスケ』の背中が、少しずつ小さくなってきた・・・。
それでも、東京まであと10km少しという目と鼻の先のゴールを目指して、アナゴ君は何かにとり憑かれたようにその全開走行を止めはしなかった・・・。
しかしアナゴ君のスピードがその時、少し鈍ったように思えた。
ほぼ同時に、アナゴ君がカタナの上で上体をやや右側に寄せ、何かを確認するような仕草を見せたその時だ・・・。
Ninjaのヘッドライトに照らされた左斜め前方を行くアナゴ君のカタナのエンジン付近から、勢い良く霧状の何かが噴出したように見えた・・・。
そしてほぼ同時に、僕の目の前のNinjaのスクリーンを、左下から右上にかけて黒い液体の
飛沫が横断した・・・。
まるで血のように黒く不気味なその飛沫・・・。僕の背筋に冷たいものが走った・・・。
そして、アナゴ君と彼の愛車GSX750Sカタナは瞬く間にその速度を失っていった・・・。