1-14 マスオ物語
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850 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/17(月) 22:05:31 ID:keXhKgP0
【SCENE53】
アメリカ人ライダー達とのバトルから一週間ほどが過ぎた。
僕とアナゴ君は、この夏の計画を立てるためにほぼ毎日のように鮒田食堂で食事を共にし、語り合った。
その計画とは・・・。もちろん夏の北海道ツーリングである。
今年は社会人である鈴木さんも、お盆休み付近から合流予定だ。
昨年、あれほど走り回った北海道だが、それでもあの広大な大地を走り尽くしては居なかった。
まだまだ行きたい所がたくさんある。 知床や納沙布岬・・・。
未だ到達していない、果てしなきその旅路を夢見て、僕らのプランニングは盛り上がっていた。
そして、北海道以外にももう一つの計画があった。
これは鈴木さんに誘われたものだ。
それは、7月末に行われる、鈴鹿8時間耐久ロードレースの観戦・・・。
鈴木さんが語るワークスチームやヨシムラ、モリワキといった有力プライベーターが繰り広げる、真夏の酷暑にも劣らないほどの熾烈な戦い・・・。
僕もアナゴ君も、未体験のレースの世界に引き込まれた・・・。
7月末の鈴鹿8耐観戦・・・。
そして直後に出発する北の大地、僕達の聖地北海道への自由なる旅・・・。
僕らの夏は忙しかった・・・。
夏という季節がもっとも青春の輝きを増す季節であろうことは、多くの人が異論を唱えないと思うが、僕もまた去年に引き続き、その若いエネルギーを灼熱の太陽の下で燃やそうとしていた・・・。
内向的で鬱に入りがちだった僕・・・。
高校時代には自らのアイデンティティに苦悩し、河原で流れる雲を眺めながら、その出るはずも無い答えを悶々と自問していたこともあった・・・。
思春期には少なからずそのような時期も必要であろうとは思うが、しかしバイクを知ってからというものそんな風に心が内に引き篭もる事が無くなった・・・。
なぜならその頃の僕にとって、全ての答えはバイクと共にあったからだ・・・。
そんな風に夏休みの計画を練っていった僕ら・・・。
しかし、その前にやらねばならない事があった・・・。
その決着をつけなければ、無心で楽しめる夏が僕らにはやってこないように思えた・・・。
8耐よりも北海道よりも最優先するその課題。
そう、奴ら・・・アメリカ人ライダーを僕らの手で撃墜する事・・・。
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853 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/17(月) 22:46:30 ID:keXhKgP0
その週末の夜。僕らの姿は第三京浜玉川IC入り口にほど近い、明神坂上の歩道橋下にあった。
闇の中、環八通りから目に付きにくい歩道橋の下に停まった3台の大型バイク。
そしてその傍らで通り過ぎる無数のヘッドライトを見据えながら煙草を吹かす3人の男・・・。
僕とアナゴ君、そして鈴木さんは待っていた・・・。
奴らが現れるのを・・・。
鈴木さんとアナゴ君の記憶による統計では、奴らアメリカ人ライダー達が土曜の夜に第三京浜に現れる確率は
5割をゆうに超えていた。
おそらく今日、待っていれば彼らは現れるだろう。
アナゴ君は、全開走行で走り慣れているのは保土ヶ谷PAへと向かう下り線であり、そこで決着をつけるべきだと主張した。僕も鈴木さんも、彼の作戦に異論は無かった。
僕とアナゴ君は、その週は平日にも関わらず2回ほど第三京浜を走り、来たるべく戦いに備えた。
鈴木さんはリアスプロケットを最高速重視のものへと換装した。
準備は万端だった・・・。
自分達の愛する場所を守るため・・・。そして日本人としての意地・・・。僕らは燃えていた・・・。
僕らは奴らの登場を待った。ひたすらに待った・・・。
ほとんど無言のまま闇に佇む3人・・・。
時折近づいてくるバイクのエンジン音に色めきたっては、奴らではない事を確認し、また押し黙った・・・。
今日はもう来ないかも知れない・・・。そう思ったときだ。
環八を流れるたくさんのクルマのエンジン音とタイヤノイズを切り裂くように、数台のバイクのエンジン音が聞こえてきた。
・・・独特のくぐもったV4サウンド、そして空気を張り裂くような2サイクルサウンド・・・。間違い無い!
奴らがやってきた!
僕らはヘルメットを装着し、それぞれの愛車に跨る。
その横を、僕らの存在に気がついていないらしき4台の敵機が通り過ぎ、そして玉川ICへと吸いこまれて行く・・・。
その4台の後姿を確認し、闇の環八の歩道に灯る3つのヘッドライト・・・。
僕達は奴らを追って玉川ICへと入っていく。
・・・決着をつけるときが来た・・・。さぁ、鬼退治だ!!
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91 :〜語物オスマ〜 雄 棲 魔 :2006/04/20(木) 23:24:45 ID:+8QqjFWM
【SCENE54】
大きく左に旋回しながら、第三京浜玉川ICを駆け上がる。
マッハが残したであろう紫煙と、カストロールの香りが戦いの幕開けを告げる・・・。
一般車両は少ない。いいコンディションだ・・・。
本線上に躍り出た僕らは、敵機4台のテールライトを確認する。
まだ奴らは背後から忍び寄る僕らの気配に気がついていないようだ。
先頭を走る鈴木さんが左手人差し指を天に突き上げる。
ミッション開始の合図・・・。
僕とアナゴ君はフルスロットル。
鈴木さんを追い抜き一気に前を行く敵機に追いすがる。
右車線をアナゴ君、最も左の第三車線を僕。
カタナとNinjaは中央車線を挟みピッタリと並走する。
中央車線を走行する敵の殿軍、マッハのテールライトがスルスルとストレス無く、猛烈な勢いで迫る。
マッハのライダーの僅かな頭の動きは、後方から接近する僕らのヘッドライトの反射するミラーに対してなのだろうが、いまさら気がついたところでとき既に遅し・・・。
カタナとNinjaはマッハの両サイドからサンドイッチし、一気に前へ出る。
先日、僕らが肝を冷やしたその卑劣なブロックに費やしている時間など今日は無い!
この時点で、前を行く敵機3台は後方で発生した突然の事態を把握したようだ。
唯でさえ猛烈な速度をさらに
上乗せしていく・・・。この時、200km/hを超えた。空中戦の如く交錯する4台のバイク。
「俺はこっちをやる。そっちは任せた。」
僕とアナゴ君の前を行くCB900FとZ1000Rは、作戦行動中の戦闘機のパイロットのように、おそらくそんな意味であろうハンドサインを交わす。
そして、カタナの前にレーンチェンジするCB900Fと、Ninjaのラインを封じ込めようとするZ1000R。
それぞれの相手は決まった
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92 :〜語物オスマ〜 雄 棲 魔 :2006/04/20(木) 23:26:50 ID:+8QqjFWM
僕の相手はZ1000R。図らずもカワサキ同士の戦い。その事が一層僕の心を熱く滾らせる・・・。
早速、大きな右コーナーの進入で僕はZ1000RのインへNinjaの鼻っ面を捻じ込む。
しかしながら相手も決して退かない。
いや、退くどころかバンク中にも関わらず僕のラインを封じ込めようと、さらにイン側へバイクを寄せてくる。
僕は一旦下がり、次のチャンスを伺う。さすがに一筋縄では行かない・・・。
次の瞬間、僕とアナゴ君、そして敵2台の間を一台のバイクが追い抜いていった。鈴木さんだ。
厄介な露払いが、Ninjaとカタナの封じ込めに躍起になっている隙を突いて鈴木さんが敵軍本陣に攻め込む・・・。
ここまでは作戦通りだ。
ファイナルのレシオを上げられたCB1100Rは、いつも以上の速度の乗りで先頭をゆくVF1000Rに迫る。
ホンダの新旧フラッグシップ。因縁の対決・・・。
スペックだけで言えば、空冷CBが新時代のホンダ世界戦略であるV4ラインナップの頂点に座るVF1000Rに敵うはずなど無い。
しかし、敵も含めた僕達は知っている・・・。ここは公道。
理論と理屈だけで勝敗が決する世界では無いという事を・・・。
いつもの丁寧かつ正確なライディングに、いつもにはない『熱さ』が加味された鈴木さんのライディングは、瞬く間に
VF1000Rとの差を縮めていく。・・・速い。
これほどまでに気迫を前面に押し出した鈴木さんの走りを見るのは初めてだった・・・。
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93 :〜語物オスマ〜 雄 棲 魔 :2006/04/20(木) 23:27:51 ID:+8QqjFWM
しかし、VF1000Rの速さは相当のものだった。
前回のバトルの時も、そして今日も、これまで見せていなかった本当の実力を敵の総大将は発揮し始めたのだ・・・。
コーナーにおいては200km/hを遥かに超える速度にも関わらず膝とステップをアスファルトに接地させそうなほどにバンクさせ旋回していく・・・。
そしてストレートでは全く躊躇せずトルクフルなV4のパワーを搾り出し突進していく・・・。
圧巻だった・・・。
一度は追いつかれた鈴木さんとの距離を再び開け始めていくその後姿は、猛進するバッファローの如く、漲るパワーと迫力に満ち溢れていた・・・。
VF1000RとCB1100Rが作り出す先頭のペースに引っ張られるかのように、後続の僕らのペースも自然と上がっていった。
750ccのアナゴ君のカタナと、設計の古いCB900Fの2台が少しずつ遅れ始める。
そして僕の直前を行くZ1000Rにもそろそろ限界が来ている事は、その必死な後姿から推察できた。
速度は230km/hを超えようとしていた・・・。
限界領域に居ながらも、僕を封じ込め続けようとするZ1000Rライダーの気迫あふれるその走りには、敵ながら感服するものがあったが、彼の意地とも言える走りもそこまでだった・・・。
ピッタリと真後ろに喰らいつくNinjaに集中力を乱されたのか、コーナーでややアウトに膨らむZ1000R。
そのがら空きになったイン側から僕は彼の前に出た。
ついに僕の前に居るのは、2台のホンダだけとなった・・・。
しかし、既にVF1000Rは逃げの体勢に入りつつあった。
鈴木さんはあらん限りの力を尽くしVF1000Rに喰らいつこうとしていたが、CB1100Rは本来これほどまでの速度域に存在できるバイクでは無い。辛そうだった。
敵総大将との間に気迫のみでは如何ともし難い壁が存在しているのは明白だった。
・・・時間が無い・・・。もうすぐ港北ICだ・・・。その時、僕はスロットルを握る右手にまだ余裕を感じていた・・・。
僕なら・・・、Ninjaなら行ける!・・・僕がそう思ったその時の事だ。
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94 :〜語物オスマ〜 雄 棲 魔 :2006/04/20(木) 23:29:36 ID:+8QqjFWM
右斜め前を走る鈴木さんが目一杯スクリーンに上体を伏せた姿勢で、僕に向かって左手で合図を送ってきたのだ。
『行け!ヤツを追え!』
鈴木さんの左手はそう僕に告げていた・・・。
僕とアナゴ君が人間的にもライディングテクニック的にも尊敬するバイク乗りの先輩である鈴木さんが、敵機攻略の最終段階において総大将を追い落とす役目を、僕に指名して来たのだ・・・。
僕はスロットルを最後まで開ける。そうして鈴木さんの期待に応える。
・・・いくぞ、Ninja・・・。僕らの未知の実力を見せ付ける時がやってきた!
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142 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/23(日) 11:56:44 ID:3uyUgFv0
【SCENE55】
第三京浜玉川ICから保土ヶ谷料金所まで。5分ほどの濃密な戦闘時間・・・。
ストレートでVF1000Rの距離が少しずつ迫り、コーナーでは決して離されない・・・。
今、前を走るのは共に走り慣れたアナゴ君とは違う『敵』であるが、例えその相手が敵であっても外国の人間であっても、確実で安定した走りをするライダーの後ろを走ることで得られる安心感に違いは無い・・・。
僕はまだバイクに乗り初めて1年足らずの初心者であり、そんな自分の走りがどのようなものであるかという客観的な評価もまだ解らなかった。
しかし、200km/hを遥かに超える速度で腰を深くイン側に落としコーナーを豪快にクリアしていくVF1000Rのライダーの後姿が決して離れていかないという事は、即ち僕もまたその走りに決してひけを取らない走りをしているという事に違いなかった・・・。
CB1100Rのヘッドライトがバックミラーの中でゆっくりと小さくなってゆく・・・。
そしてNinjaとVF1000Rは時速240kmの世界に足を踏み入れた・・・。
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143 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/23(日) 11:57:22 ID:3uyUgFv0
それほどの速度領域になってくると、エンジンパワー以外に速度の伸びを決定付ける性能要素がある。空力性能だ。
空気抵抗がエンジンパワーを抑え付ける。
数キロの速度アップに原付1台ほどの馬力を費やさなければならない。
例えば1980年代初頭に世界中のレース戦略車としてホンダが世界市場に送り込んだCB1100R。
特に鈴木さんが駆る初期型のウィークポイントはまさに空力。
世界中のレースシーズンに間に合わせる為に突貫で開発されたそのカウルの空力性能は「カウルを外した方が最高速は速い」と言われるものであった。
それほどまでにこの狂気の速度域においては、空気の壁をどう処理するかが勝負を分かつ重要なファクターとなってくる。
その豪快なパワー感や無骨に回る『男らしい』エンジンフィーリングが取りざたされる事の多いカワサキ車であるが、航空機や船舶の開発も行っている川崎重工が作るバイクにはその空力性能への拘りがあると聞いている。
コンピューターシュミレーションの発達した現代。
先進の流体力学によって産み出される現代のバイクからしてみればそれは発達途上の空力性能であろうが、それでもNinjaの持つ空力性能は当時最も発達したものであると信じている。
ヘルメットの頭頂部・・・。肩口・・・。ハンドルを握る両手・・・。
それら僅かにカウルからはみ出した体の部分にあたる空気の流れは形あるものの如く鋭く変化し、まるで掴めそうなほどに硬い。
しかし、そんな猛烈な速度で襲い来る空気の流れや景色とは全く逆に、唯一ゆっくりとNinjaに迫るものがあった・・・。
・・・VF1000Rだ。前述した空力性能の差であろうか?
100ccの排気量ハンディをもろともせず、Ninjaはホンダの最新V4マシンをゆっくりと凌駕しようとしていた・・・。
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145 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/23(日) 11:58:44 ID:3uyUgFv0
このままストレートが続けばVF1000Rの前に立てるのは明白だったが、ここは公道。
猛烈な勢いで高速コーナーが迫る・・・。ここが勝負どころだ・・・。
僕は息を止めてコーナーリングの準備をする・・・。
ストレートで誰よりも速いのはNinjaの性能的にある程度予想できていた事だ。
それに応えてNinjaは自らの持つ性能を遺憾なく発揮し、必死にVF1000Rを追い詰めるところまで僕を運んできてくれた。
そして迫る高速左コーナー・・・。ここで頑張るのは僕の役目・・・。
Ninjaの性能のみに頼りたくは無かった・・・。
それはライダーとしてのプライドとでも言えばよいだろうか・・・。
この一週間、平日でもアルバイトの合間にアナゴ君とここ第三京浜を走った・・・。
アナゴ君には幾つかのテクニックやコツを教えてもらったがその中で知った事がある・・・。
『恐怖』との付き合い方・・・。
恐怖すれば全身は硬直し、ハンドルを支持する腕にもおのずと力が入る。
セルフステアを封じ込められたバイクは、当然の如く理想のラインから外れる・・・。
不本意にコーナーのアウト側へラインを膨らませれば、更に恐怖は倍加する。
迫るコンクリートウォールに視線は釘付けになり、ライディングは破綻する。
恐怖が更なる恐怖を産む。恐怖の連鎖・・・。
だからといって脳裏から恐怖感を全て追い出したライディングというのはあり得ない。
恐怖心こそが危険へのセンサーであり、その安全センサーを取っ払った極限ライディングというのは命が幾つあっても足りはしない・・・。
恐怖を適度な緊張感に変換する事・・・。
決して恐怖する心と全身の筋肉を直結させない事・・・。
そして、自らの恐怖の『先の世界』に足を踏み入れない事・・・。
その先に行きたければ、自らのスキルを底上げする以外には無い・・・。
バンクするバイク。
旋回Gで縮む前後サスがザラザラとしたアスファルトの不気味な感触をダイレクトに伝える・・・。
腰をイン側に落とし視点を低くすると更に増す速度感・・・。
同時に湧き上がる恐怖と喜び・・・。
左高速コーナーで僕はVF1000Rに数センチも離される事は無かった・・・。
それは即ち、その後に待ち受けるストレートでの勝負の行方を決定付けていた・・・。
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146 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/23(日) 11:59:59 ID:3uyUgFv0
保土ヶ谷料金所まで数キロ、時間にしてみればあと1分も無いであろう。
その時点で僕はゆっくりとVF1000Rに 並んだ・・・。
ふと右隣のVF1000Rに視線を送る。
VF1000Rのライダーもまた、こちらを見ていた。視線が交錯した。
・・・ヘルメットの中の表情を伺い知る事など出来なかったが、その瞳は確かに微笑んでいたように見えた。
・・・そう、僕と同じように・・・。
もはや、僕の心の中で彼は『敵』では無かった・・・。
心ゆくまでのバイクでの疾走という時間を共有した妙な連帯感が芽生えていた・・・。
不思議な事に国籍も異なる右隣の相手にも同じ気持ちが流れているように感じた・・・。
そしてNinjaと僕は、今夜のバトルに参戦した7台のバイクと7人のライダーの先頭に立ったのだ・・・。
そこから保土ヶ谷料金所までの数十秒の間に、VF1000RのヘッドライトはNinjaのバックミラーの中で近からず
遠からずの位置に収まっていた・・・。そして、他の5台の姿はもはや消え去っていた・・・。
勝った・・・。僕は勝った・・・。
そんな僕にとって凱旋門のように保土ヶ谷料金所のゲートが前方に近づいてきた・・・。
悪名高いアメリカ人ライダーのリーダー格が駆るVF1000Rに先んじて保土ヶ谷PAに進入したNinja・・・。
そして、バイクを停めた僕の隣に横付けするVF1000R・・・。一気に緊張感で張り詰める空気・・・。
保土ヶ谷PAに集うライダー達は、その一部始終に注目していた・・・。
自ら『伝説』などという言葉を使う事などおこがましいが、ここ第三京浜の地で確かに『何か』が始まった瞬間だった・・・。
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174 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/24(月) 23:19:05 ID:sGoQ7yeb
【SCENE56】
保土ヶ谷PAの街灯の下。ヘルメットを被ったまま至近距離で対峙する僕とアメリカ人ライダー。
僕は彼を見据えていた・・・。決して睨み付けていたわけではない。
バイクを降りた僕が、迫力の欠片も無い優男であると言うことは、御承知の通りだ・・・。
僕は相手の大男の迫力に圧倒され動けなかったのだ・・・。
たくさんのライダーが、遠巻きにその様子を見守っていた・・・。
PA全体を包む目に見えない緊張は最高潮に達していた・・・。
そしてVF1000Rのライダーは、エンジンも止めずにバイクを降りた。
ヘルメットも脱がず、彼はその大股で数メートルの距離を3歩ほどで移動し僕の傍らに辿り着く・・・。
そして僕に向かってゆっくりと伸びてくる右拳・・・。
情けない話だが、僕は殴られると直感した・・・。僕の体は硬直した・・・。
・・・ところが、彼の右手は僕の頭の左脇を通り過ぎ、僕の右肩を抱いてきたのだった・・・。
ヘルメットを被っていて良かった・・・。その時の僕の顔は、人に見せられないほどに情けなくこわばっていただろう・・・。
そして、彼は言った・・・。
「I give up! You win!!」
極度の緊張状態の脳でも、彼のヘルメットの中の微笑を湛えた瞳とともにその英語は理解できた・・・。
彼は、自分の敗北を認め、僕の勝利を讃えてきたのだ・・・。全く予想外の展開だった・・・。
「It was so exciting and I really enjoyed it!」
僕は英語が得意ではなかった・・・。大学受験も英語は半分諦めていたようなものだ。
ここまで来ると緊張も相まって、彼が何を言っているのか全く理解できなかった・・・。
そんな僕を無視して彼は話し続けた。
先週、この保土ヶ谷PAで彼を初めて見たときの、あの仲間の会話を心あらずに聞いていたような、どこか憂いを感じさせる彼の姿は無かった・・・。
先刻の僕とのバトルが楽しかったのだと言おうとしていることは不思議に理解できた。
・・・彼の仕草や口ぶりに、一切の敵意を感じる事は無かった・・・。
彼は時にNinjaのメーターやエンジンを覗き込み、興奮気味に僕に語り続ける・・・。
僕の緊張は解れてきた・・・。
そして近づく数台のバイクのエンジン音。アナゴ君たちがやってきた・・・。
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175 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/24(月) 23:19:49 ID:sGoQ7yeb
CB1100Rに続き、カタナがPAに入ってくる。
後に聞いた話だが、アナゴ君は僕に抜かれややリズムを失ったZ1000Rまでも抜き去ってきたらしい・・・。
全く、750ccのカタナでよくやるものだ。勝負は僕達の完全勝利だった。
「フグタ君!大丈夫かっ!!」
僕の傍らに敵のリーダー格が居るのを見たアナゴ君は、急いでカタナを降りようとする。
「Shit!!」
直後に停止したCB900Fの長身の黒人ライダーが、グローブを地面に叩きつけアナゴ君に敵意剥き出しで迫る。
「Hey!Jap!!」
「やるかっ!このヤロウ!!」
ケンカ直前。二人とも胸ぐらを掴み合い、お互いに拳を握り締めた瞬間、僕と僕の傍らのリーダー格が同時に叫んだ。
「Stop!!Stop Mic!!」
「やめろ!アナゴ君!!」
胸ぐらを掴みあったまま、その言葉を発した僕ら二人をキョトンとした表情で眺める血気盛んな二人・・・。
「・・・We were defeated.」
・・・俺達は敗れた・・・。そのリーダーの言葉に大人しく従う若い黒人。
そして、その黒人とZ1000Rのライダーを手招きで呼びつけるリーダー。
僕を心配するアナゴ君と鈴木さんもほとんど訳も解らずその輪に加わる・・・。
最も遅れて保土ヶ谷に辿り着いたマッハのライダーは、先刻までバトルを展開していた6人がNinjaの周りで輪を作るその光景を理解し兼ね、数メートル離れた場所でバイクに跨ったままポカンとしていた・・・。
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260 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/27(木) 23:14:15 ID:YFnpNmfK
【SCENE57】
僕を褒め称え、そしてバトルが楽しかったと言う事を、興奮気味にボディランゲージを交えながら話す髭面のリーダー格。
遠巻きに見ていた頃の印象と異なる彼のそんな様子に驚いていたのは僕らだけではない。
彼の仲間の3人の外国人は、いつもとまるで異なるリーダーの様子に口をポカンと開け驚き、あるいは顔を見合わせたりしていた・・・。
訳も解らず佇む3人の日本人と3人の外国人・・・、そして一人笑顔で語り続ける髭面の白人・・・。
珍妙な光景だった。
そんな中で、未だケンカの火種が燻り続けるアナゴ君と長身の黒人。
二人は僕のNinjaを挟んで時折睨み合っていた・・・。
そんな時、僕の視界の片隅で無人のCB900Fが少し動いたような気がした・・・。
それは気のせいではなった。
鈴木さんが「あ〜っ!」と5mほど離れたCB900Fを指差し叫んだ。6人は一斉にCB900Fに目をやる。
サイドスタンドで停車してあったはずのCB900Fが、左斜め前方に向かって倒れ始めていた・・・。
怒りに任せバイクを飛び降りた主人の停め方が不完全だったのだろう・・・。
若い黒人の「OH〜!!」という叫びも空しく、加速度を増しアスファルトの地面に向かって倒れ行くCB900F・・・。
バイクが倒れる・・・。
そのライダーとしては一大事の現象に、ライダーとしての反射神経をいち早く働かせ、駆け寄り、そしてバイクの動きを止めたのは、他でもない・・・アナゴ君だった・・・。
45度近く傾いた900ccの質量にハンドルとシートカウルに手を掛けたアナゴ君は少しふらついたが、それでも持ちこたえバイクを立たせ、しっかりとサイドスタンドを掛ける。
一瞬遅れてそこに駆け寄った黒人は、さっきまで敵意を剥き出しにしていた相手に愛車の一大事を救われ、バツが悪そうに
「・・・Thank you・・・」と小声でアナゴ君に言う。
僕は知っていた。アナゴ君がそんな雰囲気が苦手だと言う事を。
讃えられたり、感謝されたりすると彼は昔から恥かしそうな顔になり、はぐらかそうとする。
そして、僕の思ったとおりアナゴ君は、「便所行ってくる」と言ってこの場を離れた。
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261 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/27(木) 23:14:56 ID:YFnpNmfK
「It was complete defeat.」
リーダーは黒人に向かって、完敗だなと笑って茶化す。
他の2人の白人もそれを聞いて初めて笑う。
黒人は首をすぼめてトイレに向かうアナゴ君の後姿を黙って見送った。
最も彼らに対して熱い敵対心を燃やしていたアナゴ君。
しかし、そんな彼の思わぬ機転で、場の空気は一気に和らいだ・・・。
「彼のKATANAは750ccなのに速いネ」
Z1000Rのライダーが、日本語でそう言った・・・。
この4人の外国人の中で、彼だけが日本語を話す事が出来たのだ。
「He is SAMURAI」
鈴木さんがそう言うと、場に笑いが起きた・・・。
なんのことは無い出来事と、他愛も無い一言二言で、もはや我々の間に流れていた敵対心はどこかに消え失せていた・・・。
まだぎこちない空気の流れる日米ライダーの中に、用を済ませたアナゴ君が帰ってきた。
「フグタ君、ほらよ!」
そう言ってアナゴ君が僕に投げてきたものを反射的に受け取る。缶コーヒーだった。
「今日はフグタ君の勝ちだろ?」
そうだ、この前は負けた僕がアナゴ君にコーヒーを奢ったのだ・・・。
「What?」
そのやり取りを見て、髭面はZ1000Rのライダーに問う。
どうやら勝った方がコーヒーを奢るようだと報告する彼。
それを聞くとリーダーは黒人とマッハの白人の二人に、お前らも負けたんだからSAMURAIに飲み物を買って来いと命令する。
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262 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/27(木) 23:15:35 ID:YFnpNmfK
自動販売機に走り行く二人を見送りながら、リーダーは僕に言った。
「I was defeated too.Do you need anything?」
Z1000Rのライダーは、私も負けたんだから何か要求は無いか?と言っている、と通訳してくれた。
・・・僕は悩むことなく、ハッキリと即座に答えた・・・。
「できれば、ここで必要以上に乱暴な運転をしたり、雰囲気を壊すようなことはしないで欲しい・・・。」
僕は思わずそう言ってしまったが、言った後でリーダー格の機嫌を損ね怒り出したりしないだろうかと不安になる・・・。
僕のあまりにもストレートなその要求に、アナゴ君と鈴木さんは驚いて顔を見合わせる・・・。
そんな僕らの心中をよそに、ペラペラと英語でその内容をリーダーに伝えるZ1000Rのライダー。
そして僕の要求を理解した髭面は、僕らの不安をよそに・・・笑った・・・。
「OK, I'll comply with your demands.」
Z1000Rのライダーは、リーダーが僕の要求を呑んでくれた事を僕らに伝えると、最後に自分の言葉で言った・・・。
「安心したヨ。もう来るなって言われるかと思ってネ・・・。」
・・・どうやら、ここ第三京浜は彼らにとってもお気に入りの場所のようであった・・・。
いつの間にか、僕らは笑顔だった・・・。
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263 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/27(木) 23:16:46 ID:YFnpNmfK
自動販売機におつかいに行った二人が戻って来た・・・。
マッハのライダーが鈴木さんにコーヒーを渡し、黒人は無言でアナゴ君にコーラを渡す・・・。
「サ・・・サンキュー」
アナゴ君は、あからさまに日本語の発音で、慣れない英語を使いコーラのプルタブを開けようとする。
それを見ながら目を合わせニヤニヤするマッハのライダーと黒人・・・。
次の瞬間、アナゴ君の顔を目掛けて、コーラが勢いよく吹き出した。
爆笑する二人の白人と黒人。お返しだ、というような事を言っている。
そして泡まみれのアナゴ君の顔・・・。
「こ・・・このヤロウ!」
怒るアナゴ君を見て、思わず吹き出す僕と鈴木さん。
「ちょっ!ちょっと待ってくれよ!二人まで!!」
気がつけば、数分前まで臨戦態勢だったこの場の空気が、笑い声に包まれていた・・・。
後に彼らから聞いたことであるが、彼らも母国アメリカのそれぞれの田舎で、週末にはバイクで集うような場所があったそうだ・・・。
そこに行けば、ご機嫌な仲間達に合う事ができ、楽しい夜を過ごしていたという・・・。
日本に派兵された事で、そんなお気に入りの週末を奪われた彼ら。
バイクを愛する彼らにとっては基地内のクラブハウスでは、その心を充分に満たす事が出来なかったそうだ・・・。
基地内で同じような心情をもてあましていた事で意気投合した4人は、日本でバイクを購入したり、母国から愛車を運び寄せたりして、つるむようになった・・・。
そんな彼らが、やはり日本人ライダーが週末の夜に集う第三京浜と保土ヶ谷PAにを知るのは自然な事であった・・・。しかし、彼らの期待は裏切られる事になる・・・。
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265 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/04/27(木) 23:17:20 ID:YFnpNmfK
ちょっとしたボタンの掛け違い・・・。
悪意は無いものの外国人コンプレックスを多分に持つ日本人にとって、彼ら屈強な4人の外国人は近寄りがたい存在だった・・・。異形のものを見るかのような視線・・・。
期待していた故郷の如き楽しい週末の夜はそこには無かった・・・。
もう一つの楽しみであるバイクでのバトルも、彼らに敵するものは存在せず、あらゆる意味でハッキリとしないフラストレーションが溜まっていったという・・・。
・・・日本人ライダーと彼らの間に溝が出来るまで、そう時間は掛からなかった・・・。
そんな深かったはずの溝は、数分のバトルとバイクの傍らで交わす会話でいともあっさりと氷解した・・・。
バイクとは、不思議な乗り物だ・・・。
特に北海道に行って感じた事だが、お互いバイクに乗っているだけで名も知らぬライダーとの会話が自然に始まるものだ・・・。
時にはそこから共に走り出したり、かけがえの無い友が出来たりもする。
想像してみて欲しい。観光地の駐車場で、クルマのドライバー同士でそんなことが通常あるだろうか?。
それが、バイク乗りなら特に珍しいことでもない事なのだ・・・。バイクとは、不思議な乗り物だ・・・。
マッハに乗る白人、リチャード・オイスター上等兵・・・。
CB900Fの黒人新兵、マイケル・レイ初等兵・・・。
日本語を話せるZ1000Rのジョージ・アングラー空士長・・・。
・・・そしてVF1000Rを駆る、リーダー格であり4人の中で最速の男、レッド・J・ロブスター一等軍曹・・・。
僕らは彼らをここから追い出すつもりでバトルに望んだ・・・。
しかし、勝利を収め、会話を交わしたとき、そんな気持ちは無くなっていた・・・。
同じライダーに、「ここへ来るな」とは言えなかった・・・。
いや、そう言おうなどと一瞬も頭をかすめ無かった。
・・・鬼退治は出来なかった・・・。いや、むしろ『鬼も内』になってしまった・・・。しかし、それもいい。
なにはともあれ、僕らに少々妙な仲間が出来た夜だった・・・。
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370 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/05/03(水) 00:03:49 ID:9QsImVkX
【SCENE58】
「Hey! NINJA boy & KATANA boy!」
週末毎の再会を数度繰り返すと、もはや4人の米兵は完全に親しい顔見知りと化していた。
彼らは意図的な危険走行や、PAでの挑発的・威圧的行動を取らなくなっていた。
それは、4人の長たるレッドからの指導もあったのだろうが、それにも増して「バイクと仲間と共にある楽しい週末」という彼らが望んでいた形が、ここ第三京浜と保土ヶ谷PAで徐々に形作られてきたことで、以前のような憂さ晴らしにも似た無法な行為に及ぶ必要が無くなったことが大きな要因だったのだろう・・・。
もともとは陽気な米国人の彼ら。
キッカケさえ掴めれば同じバイクに乗るもの同士、少しずつであるが確実に日本人ライダーとの壁は無くなっていった。
僕やアナゴ君、鈴木さんはもちろんのこと、鈴木さんの昔からの仲間たちも含めた保土ヶ谷に集うライダーの輪の一角に、彼らは自然に溶け込んでいった・・・。
アナゴ君などは、もっとも彼らに対し怒りの炎を滾らせていたはずであるが、それ以上に人懐っこい性格であるため、4人のアメリカ人ライダーと打ち解けるのも早かった・・・。
PAのラーメンを慣れない箸さばきで食べようとするマイケルに、眉間にしわを寄せながら真剣に箸の持ち方を指導するアナゴ君の姿は非常に可笑しかったし、僕よりは遥かに流暢な英語でタバコを吹かしながらバイク談義に興じる鈴木さんとレッドの姿はダンディズムを感じさせた・・・。
彼らとバトルをしたあの日以来、PAの雰囲気は変わった。
以前となんら変わらぬ空気が戻ってきた・・・。
そして、変わったのは米兵4人を取り巻く環境だけではない・・・。
ここ保土ヶ谷に集うライダー達の僕を見る目だ・・・。
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371 :魔 棲 雄 〜マスオ物語〜:2006/05/03(水) 00:05:13 ID:9QsImVkX
『僕を見る目』と言っても、そもそも以前は僕を注目する者など居なかった・・・。
下手すれば、トイレで絡まれそうになったりと、明らかにここに集まる強面のガラの悪い連中から見れば、名も無き『弱者』でしか無かった・・・。
しかしレッド達とのバトル以来、僕は背中に視線を感じるようになっていた・・・。
それは、深夜のアンダーグラウンドに迷い込んだか弱き羊を狙い、もしくは嘲り笑うような視線では無かった。
当時の鈴木さんやアナゴ君の弁を借りれば、それは『羨望』であったり『ライバル視』するような視線であったらしい・・・。
名も知らぬライダーから挨拶されたり、バイク談義になったりすることが多くなった・・・。
僕がPAに入ってくると、たくさんの視線が僕とNinjaを追った・・・。
形はどうあれ、注目されている事は自覚できた。
時を同じくして第三京浜の本線上でも僕に追いすがってくるバイクが増えた。
その度に、僕はその戦いの申し出に応え、ほとんど必ず彼らはバックミラーの中の小さな光点と化した・・・。
当の僕は、Ninjaの性能の賜物であると信じて疑わなかったが、それらの小さなバトルのエピソードが積み重なり僕はますます注目の新人株となっていた・・・。
誰しもが敵わなかったアメリカ人ライダーを撃破し、あろうことか仲間に引き込む。
そして、その後は一人勝ち・・・。
ここに集う百戦錬磨の強者達の間で、僕は旬の噂になっていた。「あいつは速い」と・・・。
そんな週末を数度と繰り返しているうちに、梅雨が明けた。
一人歩きする噂を尻目に、本格的到来の今夏の計画についてアナゴ君と談笑するいつもと変わらぬ僕が居た・・・。